【オリジナル曲】約束の日に
雪ノ下佐助 / Yukinoshita
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【オリジナル曲】約束の日に
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雪ノ下佐助 / Yukinoshita
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ごめんなさい、ごめんなさい。
夜の街をバタバタと駆ける。
運動神経には昔から自信がない。
じゃあ、何なら自信があるのかと聞かれると困るのだけど、とにかく夜を駆ける。
仕事から抜け出して。
もともと足は速くないけどそれが気になってなおのこと足が進まない。
今日はずっと好きだったアイドルの解散ライブなのだ。
快く送り出してくれたチームのみんな、ごめんなさい。
わたし以外の4人は顔面偏差値90くらいの美女なのに、わたし一人で平均値くらいまで下げてしまってごめんなさい。
あと、チーム内で公然と二股しててごめんなさい。他の二人からの視線が時々痛いです。
そういう普段からのごめんなさいに加えて今日はさらに仕事を押し付けてしまった。
こうしてみるとわたしはだいぶあかん女なのでは?
延々と関係ない話ばっかでごめんなさい。
ライブ会場になんとかたどり着く、もう終盤?
いや…終わってる?
慌てすぎて南北線を逆向きに乗ったのがだいぶまずかったか…
うぉぉん、ASAHIが解散してしまった。小野ちゃん、桜田ちゃん、大宮ちゃん、台場ちゃん、松平ちゃん…
ライブが終わって、どよめく声と共に出てくる人、人、人。
散々周りで支えてくれてる人達に迷惑をかけつつ、この体たらくよ。
思わず脱力して立ち尽くす。
泣いてる人も多い。そりゃそうだ。わたしもいろんな意味で泣きたい。
そのまま人混みを眺めてしまう。
今日、ここに来たかったのは推しの解散ライブだからというのはもちろんだけど、
もうひとつ、理由がある。
いや、理由というには小さすぎるけれど、
わたしの心の中に埋まっている小石のような思い出があったからだ。
10年前、大親友だった子と離れ離れになった。
夏休みの終わり頃、唐突だった。
その子と仲良くなれたのはたまたま、その子もASAHIが好きだというのがわかったからで、引っ越してしまうと知って二人で泣きながらライブ映像を見ていたりした。
相当遠くに行ってしまうから簡単には会えなくなるけど、その子はわたしに言い放ったのだ。
10年くらいして、自分でお金を稼げるようになったら、絶対会いに来る。その時は一緒にASAHIのライブを見に行こうと。
だから、もしかしたら、なんて。
約束というにはか細いけど、わたしにとって今日は約束の日なのだ。
散々周りに迷惑をかけてでも、ここに来ようと思った。最後の1ピース。
人ごみを眺め、物思いに耽りながらどれほど時間が経っただろう。
あの子の写真をスマホのアルバムから掘り起こして眺める。こんなかわいかったっけ。
すでにライブ会場から出てきた人ははけて、周囲にほとんど人はいなくなった。
肩から力が抜ける。
思い出なんてこんなものだ。
もう連絡もなくなって久しい相手と都合よく再会なんて。
そもそも再会してどうするつもりだったのな。三股?いやいやいや。
そろそろ刺されるよ、わたし。
ライブ会場だった建物を見上げる。オフィスビルとオフィスにいるみんなを思い浮かべる。
わたしはいつも、もう過ぎたことに引きずられて、先に進めない。
だからわたしはライブ会場をもう見るまいと踵を返して…後ろにいた人とぶつかって尻餅をついた。
「ご、ごめんなさい。」と慌てて立ちあがろうとするとその人が薄く笑いながら手を差し伸べる。
「相変わらずとろいのね」なんて言いながら。
本当にわたしはどうするつもりだったのだろう。
果たされる約束だなんて思っていなかったから答えなんか用意していなかった。
わたしはいつも、もう過ぎたことに引きずられて、先に進めない。
じゃあ、目の前に過去が立って手を差し伸べてきたら、わたしは手を取って前に進むのだろうか。