Learn Japanese Through Story (N3 Level):八百屋お七 / Oshichi - A Tragic Love Story -
しのせんせい
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Learn Japanese Through Story (N3 Level):八百屋お七 / Oshichi - A Tragic Love Story -
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しのせんせい
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井原西鶴の『好色五人女』を基本に、その他のエピソードを合わせて #やさしい日本語 #EasyJapanese に再構築した物語です。
English ver. • Oshichi -The Tragic Love Story of A Greeng...
八百屋お七ーーーーーーーーーーーーーー
昔、江戸の本郷のあたりに、大きな八百屋がありました。十六歳の一人娘がいて、名前はお七といいます。満開の桜のように美しくて、彼女を見て好きにならない者は一人もいないほどでした。
その頃の江戸では、よく火事が起こっていました。家は木でできていますから、たくさんの家が一度に焼けてしまいます。放火で捕まれば、死刑と決まっていました。十五歳以下の子どもでも、島流しです。
天和二年十二月にも、火事が起こりました。お七の八百屋のところにまで火が来たので、お七は母親といっしょに、近くの寺へ逃げました。
大勢が同じ寺に避難しましたから、寺は中も外もごった返していました。二人は少しも安心できませんでした。これはもう、神仏にすがるしかないと思って、一生懸命お題目を唱えていました。
ふと気が付くと、近くに同じ年頃の、武家の若者が座っていました。この寺に預けられている、吉三郎という若者です。吉三郎はさっきから、左手の指に刺さったトゲを抜こうとしているのですが、もう夕方で暗いので、なかなか抜けません。お七の母親が見るに見かねて手を貸しました。しかし、やはりうまくいきません。
自分なら上手にできるのにとお七が焦れったく思っていると、母親が言いました。
「お七、こっちへ来て、トゲを抜いて差し上げなさい」
お七は嬉しく思いながら近づくと、吉三郎の手を取って、すぐにトゲを抜いてあげました。吉三郎は、お七の美しさに見とれて、思わず、お七の手を強く握っていました。見つめられたお七も、その手を放したくないと思いました。しかし母親が見ています。仕方なく吉三郎の手を放すと、母親のところへ戻りました。トゲ抜きを持ったまま。
「…あ、お母さま、トゲ抜きを返し忘れてしまいました」
お七は母親にそう言って、吉三郎を追いかけました。そしてトゲ抜きを手渡すと、その手を強く握り返しました。
・・・
八百屋は、火事で焼けてしまいました。新しい家が建つまで、お七と母親は寺で暮らすことになりました。
お七はこっそりと、吉三郎に手紙を渡しました。しばらくすると今度は吉三郎から手紙が来ました。そうして二人は、深く愛し合うようになりました。しかし、いつも母親がそばにいるので、思うように会うことができません。
年が明けて一月十五日、米屋の主人が亡くなりました。盛大な葬式をするために、寺の人はほとんど出かけてしまいました。外は大雨、雷も鳴っています。
「ああ怖い怖い」
母親は、お七を抱き寄せました。
「お七、耳をふさいでいなさい」
お七は吉三郎のことばかり考えていましたから、雷など少しも怖くありませんでした。
吉三郎に会うのは今夜しかない、そう思いつめていました。
そしてその夜、こっそりと、吉三郎の部屋に忍び込みました。
吉三郎はすぐに目を覚ましました。
「お、お七さん、どうしてここへ…」
「吉三郎様、私はもう、十六です」
外では雷が鳴っています。
朝になってから、母親は、お七がいないことに気が付きました。寺中を探して、吉三郎の部屋にいる娘を見つけると、慌てて客間に連れ戻しました。そして、二人が二度と会えないように、厳しい監視を始めました。しかし、二人を可愛そうに思う人が手伝って、手紙のやりとりだけは、続けることができました。
・・・
そうしているうちに、八百屋の新しい家ができました。お七と母親は、寺を出ることになりました。
新しい家に引っ越してから、お七は何をする気にもなれません。寝ても覚めても、考えるのは吉三郎のことばかりです。
ある寒い日の夕方、汚れた子どもが山菜をもって八百屋に来ました。雪がひどくて家に帰れないので、一晩泊めてほしいと言います。父親はかわいそうに思って、その子どもを家の中に入れてやりました。
その夜中、誰かが八百屋の戸を叩いて、大声で言いました。
「旦那様、旦那様! 姪御様に子どもが生まれました」
両親は喜んで起きだして、すぐに出かけていきました。
お七は山菜売りの子どもといっしょに、家に残りました。子どもは震えているようでした。
「大丈夫? 寒いでしょう、お湯でも飲みなさい」
お七がお湯を手渡しながら、よく見ると、山菜売りの子どもは、吉三郎でした。
「吉三郎様」
「お七、どうしても、会いたくて…」
吉三郎は、お七に会いたいあまり、大雪の中、山菜売りになりすましてやってきたのでした。
抱き合うと、吉三郎の体はすっかり冷えていました。お七は急いで吉三郎を自分の部屋に入れて、体をさすったり、薬を飲ませたりしました。
そこへ、両親が戻ってきました。となりの部屋で、「元気な赤ちゃんだったなあ」とか、「産着はどんな柄にしようか」とか、嬉しそうに話しています。
お七と吉三郎は一言も話さないまま、小さい灯の下に紙を置いて、朝まで、お互いの思いを書き合いました。
吉三郎は、夜が明ける前に寺へ帰りました。しかし、ずいぶん無茶をしましたから、そのまま倒れてしまいました。
・・・
お七の恋心は募るばかりでした。しかし、手紙を書いても返事が来なくなりました。お七はどうしたらいいのか、わからなくなってしまいました。
ある晩、一人で悲しく空を見上げていると、強い風が吹きました。
「ああ、私が初めて吉三郎様に会った、あの時も、こんな風が吹いていた…。そうだ、もう一度火事が起こったら、きっとまた、あのお寺に行けるはず…」
お七は新しい家に、火をつけました。
「…私、なんてことを」
お七は我にかえると、急いで火の見櫓に駆け上り、力いっぱい半鐘を鳴らしました。
火事はすぐに消し止められました。お七は自分が火をつけたことを、正直に話しました。
お七は捕まりました。放火は、死刑です。
奉行は、若いお七をかわいそうに思いました。
「お七、お前は十五歳だな。まだ子どもだから島流しだ。死刑ではない」
しかし、お七は答えました。
「いいえ、私は十六です」
「いや、まだ十五のはずだ」
「いいえ、十六でございます」
奉行はお七に嘘をつかせようとしましたが、お七は首を横に振るばかりです。仕方なく奉行は、お七に死刑を言い渡しました。
お七は市中を引き回されました。覚悟ができていましたから、少しも取り乱しませんでした。いつものように着物を整えて、髪を結って、とても美しい姿でした。そんなお七を見て、人々はみんな、かわいそうに思いました。
処刑場に着きました。
役人の一人が桜の枝を一本折って、死出の旅路のはなむけに、お七に持たせました。お七はその桜を眺めながら、つぶやきました。
「この桜も、私も、名前だけ残して、今日散ってしまうのですね」
天和三年三月末、お七は火あぶりにされました。
お七の処刑から百日後、生死の境をさまよっていた吉三郎は、ようやく意識を取り戻しました。
お七が処刑されたことを聞くと、すぐに刀を抜いて、「お七、待っていろ。私もすぐに行く…」と死のうとしました。
しかし寺の人々や、お七の両親が止めました。
間もなく、吉三郎は出家しました。西運と名前を変えて、死ぬまで、お七の菩提を弔ったということです。
おわり
※背景の浮世絵は主に、川瀬巴水の作品をお借りしています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーしの
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