貧しい許婚を捨てて奉行の娘を娶った侍、しかし彼が置き忘れたものは、まだ彼女の手の中にあった | 民話 | 民話 | 日本昔話
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「この縁談は、なかったことにいたす。」
三年の約束を、たった一言で捨てた男がおりました。
上州は板鼻の宿はずれ。針仕事で病の母を養う娘・すみには、早瀬宗介という許婚がおりました。三年前、宗介は一対の蝶の根付を二つに分け、その片方をすみの手に握らせて江戸へ発ちます。「この蝶の二羽が再び揃う日、その日が二人の祝言の日となる」——。
ところが御役に取り立てられた宗介が選んだのは、御勘定奉行の婿となる道でした。詫びの金子ひとつを残して去っていく背中を、すみはただ見送るほかありません。仕事も、居場所さえも失っていく中、すみは取り壊しの決まった宗介の生家で、一通の古い書き置きを見つけます。そこに記されていたのは、宗介が固く隠し続けてきた出自の秘密でした。そして宗介の腰には、なぜか今もなお、もう片方の蝶が下げられたままだったのです。
すべてを失ったすみが、最後に選んだ道とは——。
江戸の世を舞台にした民話を、ゆっくりとした語りでお届けいたします。
【この物語が伝えるもの】
母がすみに遺した、最後の言葉。
「恨みを晴らすよりも、自分の分を取り戻しなさい。」
人を憎むことばかりに心を注げば、いつしか自分の人生そのものを失ってしまう——。まことの報いとは、相手を崩すことではなく、自らの足で立ち、自分の居場所を堂々と築き直すことなのかもしれません。
もしあなたがすみの立場であったなら、あの書き置きをどうなさいましたか。
そのまま置いて出ますか。それとも、懐に納めますか。
コメント欄で、ぜひあなたのお考えをお聞かせくださいませ。
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