【境界知能】境界知能だと知りたくなかった【精神科医が10.5分で説明】知的障害|精神科|葛藤
こころ診療所チャンネル【精神科医が心療内科・精神科を解説】
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【境界知能】境界知能だと知りたくなかった【精神科医が10.5分で説明】知的障害|精神科|葛藤
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0:00 (1)はじめに
0:15 (2)境界知能と困難なこと
1:21 (3)境界知能の診断はしばしば偶発的
2:01 (4)境界知能のつらい側面3つ
4:15 (5)それでも前を向くには
5:05 ①自分の強みを知る
5:53 ②合う環境を探す
7:17 ③周りに惑わされない
8:21 ④弱点をカバーする
9:10 (6)最終的には逆境でも前を向く姿勢
9:42 (7)まとめ
「境界知能だと知りたくなかった」との話が出てくることがあります。偶発的な診断の場合も多く、限界に直面しつつ治療法がないなどつらい面も確かに多いです。一方、自分の強みを知りあう環境を選ぶことで打開できる場面もあります。
ご質問「境界知能だと知りたくなかった」について、精神科医が10.5分で回答しています。
出演:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)
こころ診療所吉祥寺駅前 https://kokoro-kichijoji.com
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↓詳しい内容はこちらです。
(1)はじめに
今回は「境界知能だと知りたくなかった」というご質問についてお答えします。結論としては「つらい面も大きいが、前向きな意味づけを」と考えています。
「境界知能」とは知的障害までは至らない知的機能の困難を指します。IQ70から84で定義され、約13%(7人に1人)が該当するとされています。障害ではないものの、勉強や仕事など日常生活への影響は大きい場合があります。
(2)境界知能と困難なこと
境界知能の方が苦手とすることには、いくつかの特徴があります。
まず「複雑な思考」です。考慮すべき要素が多くなると、正確な思考が難しくなります。次に「入り組んだ判断」で、様々な要素や視点を取り入れての判断は知的機能の面から行いにくいことがあります。そして「対人的な駆け引き」があり、複雑な人間関係や悪意の認識と対応には困難が伴いやすいです。
これらの特性は社会生活にも影響を及ぼします。「仕事での不適応」として、求められるレベルの仕事遂行が難しく、退職や転職を繰り返す場合があります。「人間関係での影響」としては、相手から低く見られて搾取されたり、利用されるリスクが高まります。さらに「二次的な精神不調」として、失敗の繰り返しによる自己肯定感の低下からうつ病などを合併しやすいことがあります。
(3)境界知能の診断はしばしば偶発的
境界知能は自覚して診断されることは少ないのが現状です。基本的に仕事などで適応していれば知能検査は行われず、境界知能の診断を受けることはほぼありません。
多くの場合、不適応が繰り返されると、まずは発達障害を疑って受診し心理検査を受けることになります。この検査の結果、偶発的に境界知能、つまりIQの数値からの境界知能が判明し、本人としては意外な形で診断を受けることが多いのです。
(4)境界知能のつらい側面3つ
境界知能には暗いイメージが付きまとう面があります。そのつらい側面を3つ挙げてみましょう。
1つ目は「人生の制限と不利に直結する」という点です。仕事や日常生活の多くには思考、記憶、判断など一種の知的活動が伴います。境界知能では知的活動全般が困難なため、多くの場面で他の人より限界や制限が生じやすくなります。その結果、日常生活で困難が強く、仕事などでは低く評価されやすいことになります。
いわば「一種の知的アスリートになれない」という現実があります。スポーツ選手など運動のアスリートに憧れても、体力面などから実現が難しい場合があるのと同様に、境界知能では知的分野の活動において同じことが当てはまります。ここでの知能は勉強だけではなく、いわゆる「地頭」的なその場の把握力や反応力にも関わります。
2つ目は「治療薬も福祉サービスもない」という点です。境界知能は生来の特性なので、うつ病で抗うつ薬を使うような特性自体に効く薬はありません。また障害ではないため、知的障害などと異なり障害福祉サービスの対象にはなりません。診断を受けても治療や援助は受けられず、不利な状況の中での「自助」が原則求められます。
3つ目は「技術獲得の効果も限界がある」という点です。発達障害では診断後に特性を理解し、カバーする技術を練習して獲得することに取り組みますが、境界知能でも同様の取り組みは可能です。ただし知的機能の面からどうしても技術獲得にも限界が生じやすく、診断を受けることによる取り組みの伸び代が発達障害より少ない面があります。
(5)それでも前を向くには
つらさが多い中でどうすれば前を向けるでしょうか。「自分の強みを知りつつ、合う環境を見つけていく」ことが大切です。
確かに制限や偏見もあり、取り組みだけでは限界がある場合もあります。一方で、多くの場合、診断を受ける時点では環境とのミスマッチがあり、それを是正することで改善が見込める余地は大きいものです。そのためには、自分の強みを含めた個性を知り、周りの雑音に影響されすぎないことが重要です。
①自分の強みを知る
境界知能があっても強みがないわけではなく、人によってそれぞれの強みがあります。今後適応していくためにも、自分の強みを知ることは非常に大切です。自分で気づく場合もありますが、周りからの評価が参考になることもあるでしょう。
強みとして考えられるのは、まず「真面目さ」です。ズルや手抜きをせず仕事を継続することが強みになる場合があります。また「愛嬌や人懐こさ」も、複雑なことは難しくても人柄で集団の中に適応しやすい場合があります。さらに「体力や持久力」として、ストレスや疲労がある中でも地道に繰り返し行える能力が強みになることもあります。
②合う環境を探す
強みを活かせる環境であれば、無理なく適応しやすくなります。一方で、知的機能などの苦手が大きな要素を占める環境では適応が難しくなります。自分の特性と環境の求めるものを照らし合わせて、マッチする環境を探すことが境界知能では特に重要です。
境界知能ではあまり合わない仕事環境としては、「専門性が高い仕事」があります。複雑なことを理解して実行することは困難が強いでしょう。また「その場の判断が必要な仕事」も、その場で思考して判断することが求められるため相性が悪いことが多いです。さらに「マルチタスクが必要な仕事」も、複数のことを同時並行で行うことは特性上困難です。
一方、合うことがある仕事環境としては、「地道なことを繰り返す仕事」があります。知的機能よりも飽きずに同じ作業を繰り返すことが求められる仕事です。また「判断より関わりが大事な仕事」も、関わり自体には知的機能よりも情緒的な面が優先される場合があります。さらに「体を使うことが大事な仕事」も、知的機能よりも体力や持続力が強みになりやすいでしょう。
③周りに惑わされない
周りには劣等感を刺激する人や、特性を利用したり搾取しようとする人もいます。これらに影響を受けると実害があるほか、自己肯定感が大きく下がり悪循環に陥りやすくなります。悪影響のある周りの人や物に惑わされず、合う環境ですべきことを続けることが大切です。
惑わされると悪影響のあるものとしては、「マウントしたがる他者」があります。自分を満たすために他者を踏み台にするような人の標的になりやすいので、距離を取ることが大事です。また「SNSの情報」も、他者との比較を促す情報が多く、悪影響を受けやすいため距離を取って影響を減らすことが現実的です。さらに「詐欺やマルチ商法」なども、知的な面から騙されるリスクがあるため、危ういものには近づかないようにしましょう。
④弱点をカバーする
合う環境が大事な一方で、どうしても弱点のカバーが必要な場面もあります。限界を知りつつも、できる範囲でカバーして適応度を高めていきましょう。
カバーの方法としては、「メモ帳など」の活用があります。記憶など苦手なことはなるべく外在化することで知的機能の限界をカバーします。また「理解ある友人等」の助けを借り、思考や記憶に関しては任せつつ、他の部分で貢献してバランスを取っていくことも大切です。さらに「AIの活用」も、知識や判断の弱点に対して、一種の「知能の装具」として活用することが今後期待されます。
(6)最終的には逆境でも前を向く姿勢
様々な対策をとっても、うまくいかず逆境になることは現実的にあり得ます。そんな時も含めて、物事や問題にどう前向きに取り組んでいくか、その行動や姿勢の積み重ねが非常に大切になります。
日々の行動と姿勢の積み重ねが、知的機能からくる適応の壁を超える鍵になることは少なくありません。
(7)まとめ
境界知能の診断は、治療薬がない一方で制限への直面が大きいという特徴があります。また意識せず偶発的に見つかることが多いため、心理的なショックや拒否感が生じやすいものです。
主な対策は、合う環境を見つける環境調整です。そのためにも、自分の特性や強みを知り、周りに惑わされすぎず、すべきことに取り組む姿勢が大切です。
様々な取り組みを行っても逆境が続く場合でも、前を向いていく姿勢と行動の積み重ねが逆境打開の鍵になる場合があります。境界知能という特性を持ちながらも、自分らしく生きていく道はきっと見つかるはずです。
こころ診療所グループ(医療法人社団Heart Station)
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こころ診療所吉祥寺駅前(東京都武蔵野市吉祥寺南町1-4-3ニューセンタービル6階、☎0422-26-5695)
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【監修者】
医療法人社団Heart Station 理事長 府中こころ診療所院長 春日雄一郎
精神科医(精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医)
2005年東京大学医学部卒業、NCNP病院、永寿会恩方病院等を経て、2014年に府中こころ診療所を開設、その後医療法人化し理事長に就任、2021年8月に分院「こころ診療所吉祥寺駅前」を開業。メンタルクリニックの現場で、心療内科・精神科の臨床に取り組み続けている。