蓑毛の薄墨桜|春ですね。丹沢・山麓の静かすぎる桜を見にいく(Minoge, Japan | Usuzumi Cherry Blossoms in a Too-Quiet Spring)
ぼっち登山日和
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蓑毛の薄墨桜|春ですね。丹沢・山麓の静かすぎる桜を見にいく(Minoge, Japan | Usuzumi Cherry Blossoms in a Too-Quiet Spring)
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ぼっち登山日和
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バスの時刻表をにらみながら、ちょっとした作戦を立てました。
秦野駅からヤビツ峠行きのバスは、春の週末ともなれば大変な混雑ぶりです。
みんなが同じ方向を目指して、ハイカーがぎゅうぎゅうと押し合いながら山岳路線を揺られていきます。
蓑毛を過ぎると道は一気に細くなり、路線バスとは思えないような急坂と曲がりくねったカーブが続きます。
起終点を変えたかったので、往路か復路のどちらかをバス利用しようと考えました。
蓑毛に車を停めておき、秦野駅からヤビツ峠行の便に乗り継いで――と最初は思ったのですが、それだと結局、あの満員バスのお世話になる。
ならば、そのバスがヤビツ峠で折り返して秦野駅へ戻る便に乗ればどうか。
終点で客を吐き出してきたバスです。きっと空いているはずです。
果たして、そのバスには私しかいませんでした。
貸切状態の車内でシートに深く腰かけ、曲がりくねった山道を下りながら、窓の外を流れる景色をぼんやりと眺めていました。
この幸先に、ひとり小さく満足していました。
蓑毛を歩いてみようと思ったのは、薄墨桜を見るためでした。
春と花、というのは、私にとっては少し照れくさいテーマです。
どちらかといえば、霧の中の道標だとか、苔むした石段だとか、そういう地味で湿っぽいものに惹かれてきましたので。
だから「お花をメインにしたハイキング♪」などと自分で計画しておきながら、どこかむず痒い気持ちがありました。
だからでしょうか。晴れ予報だったのに...曇天でした。
山裾の集落に静かに立つ薄墨桜は、淡い灰がかった白で、鮮やかに晴れた青空の下で見るのとはまた違う表情をしていました。
曇りの光の中では、桜は主張しないのですね。
ただそこにある、という感じで、ぼんやりと霞んでいます。
盛りはやや過ぎていて、花びらがひとひらふたひら、ゆっくりと落ちていきます。
薄いピンクとも、白とも、また滲んだ墨のような淡さとも、見れば見るほど輪郭がはっきりしない花です。
これが快晴の下だったら、また違ったのでしょうか。
それとも、この花はもともとこういう、曇った空によく似合う花なのでしょうか。
さて、バスで25分の道のりを、ヤビツ峠まで歩いて登り返していきます。
植林帯を抜け、沢音を聞きながら高度を上げていく道のりです。
特別に険しいわけではありませんが、急に暑くなった日だったので、地味に続く登りで、汗がにじみました。
丹沢、というのは本当に興味深い山域だと思います。
標高だけ見れば決して高くない。
しかし歩いてみると、どこまでも奥が深いです。
尾根から尾根へ、谷から谷へ。
地図を広げるたびに「まだこんなにある」と思います。
神奈川の水がめとして、また首都圏に接する手近な山として、長く人々の生活と結びついてきた山だからか、
歴史的な逸話や、山岳信仰の痕跡や、炭焼きや林業の記憶が、あちこちにさりげなく残っています。
丹沢という山域は、登山道や林道が複数張り巡らされているという意味で「ルートが多い」とも言えますが、
その見方そのものにもいくつもの入口がある山だと思います。
どの道を選ぶかによって体験が変わるように、どこに意識を向けるかによって、立ち上がってくる風景の意味もまた変わっていきます。
「どの道で歩くか」という選択と同じくらい、「どの視点でこの山を受け取るか」という選択が豊かに開かれている場所であり、
その二つが重なり合うことで、同じ場所にいながらも異なる山が何度も立ち上がってくるような経験をもたらしてくれます。
そこを歩いたときの満足感は、「到達した」という種類の達成ではなくて、むしろ「移り変わりそのものを最後まで見届けた」という感覚に近いです。
山頂は一点ですが、麓から中腹は“変化そのもの”が続いている場所なので、そこで得られる体験は連続的です。
どこまで行っても途中のままで、そして、そのまま、終わっていきました(笑)
撮影日:2026年4月5日(日)
※追記
蓑毛大日堂は、毎月第1日曜日に月例一般公開が実施されています。
(たまたま行った日が、第一日曜日!なんと幸運な)
本堂、不動堂、閻魔堂が公開され、貴重な仏像や彫刻を拝観できます。
時間は通常9:00〜15:00頃、秦野駅からバスで約25分(「蓑毛」下車)です。