「私はロボットではありません」は、なぜ押すだけで人間だとわかるのか|CAPTCHAの正体
AIゆっくり探究所
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「私はロボットではありません」は、なぜ押すだけで人間だとわかるのか|CAPTCHAの正体
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毎日押している「私はロボットではありません」。ボタンを押しただけで、なぜ人間だとわかるのでしょうか。しかも2025年7月には、AIのエージェントがまさにそのチェックボックスを押して通ったと報じられました。ロボットを締め出すためのテストを、ロボットが通っている。では、あのテストはいったい何を確かめているのか。CAPTCHA を作った研究者の論文、グーグルの公式の説明、外から仕組みを調べた研究の原文を確かめながら、底まで掘り下げます。
CAPTCHA は最初から「今のAIには解けない問題」に賭けた仕組みでした。作った研究者は「破られたら、役に立つAIの問題が解けたことになるので、どちらに転んでも得」と書いています(von Ahn ほか 2003)。歪んだ文字のテストで機械が苦手だったのは、1文字を読むことではなく「どこからどこまでが1文字か」の切り分けでした(1文字ならコンピュータの方が人間と同等以上・2005年)。reCAPTCHA は人間が打った答えで古い本を電子化し、グーグル自身が「人間がラベルを付けた画像を機械学習のデータセットに」と書いていました。2013年、切り分けをせずに画像全体から読む畳み込みのAIが、reCAPTCHA の一番難しい文字を99.8%で読み、グーグルは「歪んだ文字だけでは、もう頼れるテストではない」と認めました。
いまのチェックボックスは、押した瞬間ではなく、押す前・最中・後の全体とブラウザの情報で点数をつけ、判断がつかないときだけ画像のパズル(追試)を出します。外から調べた研究では、マウスの動かし方を変えても判定は悪くならず、作ってから9日たったクッキーがあればチェックだけで通れました(2016年)。画像のパズルも2024年の研究で100%解かれています。CAPTCHA は機械を止めるのではなく、攻める値段を上げる仕組みで、判定は「問題の答え」から「どこから来て、どう動いてきたか」へ移りました。その代わりに、見えない人の締め出し・人間の時間・追跡という代償を払っています。判定の本当の中身は公開されていません。
■ 自分で作って確かめたもの(すべて自作のCAPTCHAと自作の判定器。実在のサイトには一切触れていません)
・歪んだ5文字のCAPTCHAを自作し、小さな畳み込みのAI(GPU)に読ませた。学習に使う枚数を変えると、新しい画像を5文字とも正しく読めた割合は 300枚 0%・1000枚 0%(見せた画像はほぼ丸暗記)・3000枚 18.9%・1万枚 86.6%・6万枚 94.3%。
・文字の間をあけたものから重ねたものまで6段階で比べた。塊で切ってから読む昔ながらの方法は 77.1% → 0%、切り分けない読み手は 98.2% → 54.1%。1文字だけなら 100%。
・数式で作った「人間らしい」マウスの動きと、まねるプログラムを見分ける判定器を作った。1回目:人間らしい動きを100%通し、まっすぐのプログラムを100%捕まえたが、曲線でまねたものは54%しか捕まらない。学び直すと曲線のまねは100%、同じ数式でまねたものは0%。それを見せて学ばせても49.4%(当てずっぽうと同じ)。
どれも小さな自作の設定での結果です。
■ 主な出典
・von Ahn・Blum・Hopper・Langford「CAPTCHA: Using Hard AI Problems for Security」(Eurocrypt 2003)
・von Ahn ほか「reCAPTCHA: Human-Based Character Recognition via Web Security Measures」(Science 2008)
・Chellapilla ほか「Computers beat Humans at Single Character Recognition in Reading based HIPs」(CEAS 2005)
・Chellapilla & Simard「Using Machine Learning to Break Visual Human Interaction Proofs」(NIPS 2004)
・Goodfellow ほか「Multi-digit Number Recognition from Street View Imagery using Deep Convolutional Neural Networks」(2013)
・Google Online Security Blog「Are you a robot? Introducing No CAPTCHA reCAPTCHA」(2014-12-03)
・Google「Teaching computers to read: Google acquires reCAPTCHA」(2009)
・reCAPTCHA v3 の開発者向け文書
・Bursztein ほか「How Good Are Humans at Solving CAPTCHAs?」(IEEE S&P 2010)
・Bursztein ほか「Text-based CAPTCHA Strengths and Weaknesses」(CCS 2011)・「The End is Nigh: Generic Solving of Text-based CAPTCHAs」(WOOT 2014)
・George ほか(Vicarious)「A generative vision model that trains with high data efficiency and breaks text-based CAPTCHAs」(Science 2017)
・Ye ほか「Yet Another Text Captcha Solver」(CCS 2018)
・Sivakorn・Polakis・Keromytis「I'm not a human: Breaking the Google reCAPTCHA」(Black Hat Asia 2016)
・Hossen ほか「An Object Detection based Solver for Google's Image reCAPTCHA v2」(RAID 2020)
・Plesner・Vontobel・Wattenhofer「Breaking reCAPTCHAv2」(COMPSAC 2024)
・Searles ほか「An Empirical Study & Evaluation of Modern CAPTCHAs」(USENIX Security 2023)
・Searles ほか「Dazed & Confused: A Large-Scale Real-World User Study of reCAPTCHAv2」(2023)
・Motoyama ほか「Re: CAPTCHAs—Understanding CAPTCHA-Solving Services in an Economic Context」(USENIX Security 2010)
・OpenAI「GPT-4 System Card」(2023)/ METR(旧 ARC Evals)の報告
・Ars Technica(ChatGPT Agent と「I am not a robot」・2025-07)の転載
・heise online「Google's new reCAPTCHA」(2026-05)
・Cloudflare「Turnstile」(2022)/「Private Access Tokens」(2022)/「500 years per day」(2021)
・Acien ほか「BeCAPTCHA-Mouse」(2020)
・Biscione & Bowers「Convolutional Neural Networks Are Not Invariant to Translation, but They Can Learn to Be」(JMLR 2021)
・Flash & Hogan「The coordination of arm movements」(J. Neurosci. 1985)・Fitts's law
・米国特許 US6195698(AltaVista/Compaq・1998年出願)
■ 注意
CAPTCHA を実際のサイトで破る方法は扱っていません。実演はすべて自分で作ったテストと判定器です。マウスの実演の「人間らしい動き」は本物の人の記録ではなく、研究で知られている手の動きの性質を数式で作ったものです。チェックボックスや画像のパズル、関所などの絵はイメージ・模式図で、実在の画面ではありません。reCAPTCHA の判定の中身は公開されておらず、紹介した仕組みは外から調べた研究の結果です。
■ 章
0:00 はじめに(押すだけで通るボタンの正体)
2:24 第1章 なぜ門番が要るのか
5:30 第2章 なぞなぞを鍵にする賭け
8:32 第3章 1文字は読めるのに
12:25 第4章 なぞなぞの答えで本を読む
15:53 第5章 切り分けずに読むAI
23:07 第6章 押すだけで通るボタン
26:48 第7章 足跡はまねされる
29:46 第8章 追試も解かれた
32:35 第9章 そもそも止めていなかった
35:14 第10章 門番は何を見るようになったのか
■ クレジット
音声合成: AquesTalk (株式会社アクエスト)
立ち絵: たぬき式ゆっくり
BGM: OpenTracks(旧DOVA-SYNDROME)「プラネタリウムガーデン」「さみしいおばけと東京の月」「YOIYAMI-宵闇-」「Serene」「Fireworks」
この動画は東方Projectの二次創作です。