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年の差カップルの愛は真実の愛なのか?精神科医が転移の概念を説明します。

精神科医 芳賀高浩

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年の差カップルの愛は真実の愛なのか?精神科医が転移の概念を説明します。

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精神科医 芳賀高浩
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こんばんは。精神科医の芳賀高浩でございます。今日は久しぶりにスタジオからお話しさせていただいております。今日のテーマは、「年の差カップルから考える人間関係」です。 年の差カップルという言葉は、最近ではかなり一般的に使われるようになりました。奥さんが年上で旦那さんが年下という場合もありますし、旦那さんが年上で奥さんが年下という場合もあります。では、どれくらい年齢が離れていたら「年の差カップル」と言えるのか。これは明確な定義があるわけではありませんが、私の感覚では、10歳差くらいだと、まだ「年の差」と強く言うほどではないように思います。兄弟でも10歳くらい離れていることはありますからね。 ただ、15歳以上離れてくると、これはかなり年齢差を感じます。20歳差となると、もはや親子ほどの差になります。たとえば30歳と50歳、35歳と55歳、20歳と40歳。こうなってくると、単なる年齢差というよりも、人生の段階そのものがかなり違ってきます。今日は、そうした年の差のある恋愛関係を、精神科医の視点から少し考えてみたいと思います。 もちろん、最初に申し上げておきたいのは、年の差恋愛そのものを否定したいわけではないということです。お互いが成人で、納得して付き合っているのであれば、それはその人たちの自由です。外から簡単に善悪を決める話ではありません。ただ、精神科医として人間関係を見ていると、年の差が大きい関係には、しばしば「転移」という心理現象が絡んでいることがあるのではないかと思うのです。 転移というのは、簡単に言えば、今目の前にいる人との関係に、過去の誰かとの関係を重ねてしまうことです。たとえば、昔の先生への憧れ、父親への満たされなかった思い、母親からもっと愛されたかったという気持ち、そうした過去の人間関係の感情を、今の恋人や配偶者に重ねてしまう。これが転移です。 たとえば、若い頃に学校の先生に強く憧れた人がいたとします。中学生の頃、新卒の若い先生に恋のような感情を抱いた。しかし当然ながら、先生は生徒を恋愛対象として見ることはありません。教師としては優しく接してくれた。けれども、男女としての関係は成立しなかった。そのときの「満たされなかった思い」が、心の中にずっと生々しく残る人がいるわけです。 多くの人にとって、そうした記憶は、青春時代の淡い思い出として整理されていきます。思い出せば懐かしい。少し恥ずかしい。けれども、日常生活を大きく左右するほどではない。しかし、人によっては、その記憶が非常に鮮明なまま残ります。つらい記憶だけではなく、甘く切ない記憶、満たされなかった恋愛感情のようなものも、心の奥に強く保存されることがあります。 そうすると、大人になってから、自分よりかなり年上の人に出会ったとき、その人自身を好きになるというよりも、その人を通して、過去の満たされなかった思いをもう一度満たそうとすることがあるのです。本人は「この人が好きだ」と思っている。しかし実際には、その人そのものではなく、昔の先生、父親、母親、あるいは自分を守ってくれた年上の誰かを、その相手に重ねている可能性がある。 もちろん、年上の側から見ると、若い相手に魅力を感じること自体は、それほど不自然ではありません。50歳の男性が30歳の女性に魅力を感じる。50歳の女性が30歳の男性に魅力を感じる。これは生物学的にも心理的にも、特別に奇妙なことではありません。若さ、活力、美しさ、生命力に惹かれるというのは、人間にとって自然な感情でもあります。 ただ、反対側、つまり若い人がかなり年上の相手に強く惹かれるときには、少し丁寧に考える必要があります。もちろん、人柄に惹かれることもあるでしょう。尊敬できる、安心できる、経済的に安定している、経験が豊かで頼れる。そうした魅力は確かにあります。若い同世代の相手では味わえない落ち着きや包容力を感じることもあるでしょう。 しかし、20歳の人が50歳の人に、純粋な恋愛感情として強く惹かれるとき、そこには単なる現在の相手への好意だけではなく、過去の人間関係が重なっていることがあるのではないか。私はそう考えることがあります。特に、金銭的な利得や社会的な利得が明確にあるわけではないのに、親子ほど年の離れた相手に強く惹かれていく場合、そこには転移が働いている可能性を考えます。 たとえば、父親から十分に愛情を受けられなかった人が、父親世代の男性に強く惹かれる。母親から受け止めてもらえなかった男性が、母親世代の女性に特別な結びつきを求める。これは単なる性的な好みというよりも、もっと深いところにある「満たされなかった親子関係」を、恋愛関係の中で満たそうとしている状態かもしれません。 そういう関係は、うまくいっているときには非常に濃密に見えます。若い側は年上の相手を強く求める。年上の側も、自分が必要とされていると感じてうれしくなる。自分がまだ魅力的なのだ、自分は若い相手から愛されているのだと感じる。お互いの需要と供給が一致しているように見えるわけです。 しかし問題は、関係がうまくいかなくなったときです。転移が強く働いている関係は、相手そのものを見ているようで、実は相手に過去の誰かを重ねています。だから、相手が自分の期待通りに振る舞わなくなったとき、失望が非常に大きくなる。恋人に裏切られたというよりも、父親に裏切られた、母親に見捨てられた、昔の先生にまた相手にされなかった、そういう古い感情まで一気に動いてしまうことがあるのです。 だから、年の差カップルが別れるときに、非常にこじれることがあります。もちろん、すべての年の差カップルがそうだと言っているわけではありません。ただ、年齢差が大きい関係では、恋愛の破綻が単なる恋愛の破綻にとどまらず、過去の傷や満たされなかった思いを刺激してしまうことがある。すると、感情が一気に不安定になったり、怒りや悲しみが極端に強くなったりすることがあります。 私は臨床で「メンタルが不安定な人」という言い方をすることがありますが、ここで大事なのは、その人を責めることではありません。むしろ、その人の心の中に、まだ整理しきれていない強い感情が残っているのだと理解することです。過去の人間関係で満たされなかったものがあり、それを現在の恋愛関係で満たそうとしている。だからこそ、関係がうまくいっているときは救われたように感じる一方で、うまくいかなくなると激しく傷ついてしまう。 これは、宗教の話にも少し似ています。宗教を信じている人が皆悪いという話ではありません。むしろ、宗教を通じて規律を守り、礼儀正しく、まじめに生きている人もたくさんいます。ただ、その人自身が苦労して自分の中から築き上げた価値観なのか、それとも外から与えられた価値観によって一時的に支えられているのかによって、安定性が違うことがあります。 恋愛も同じです。相手そのものを見て築いた関係なのか。それとも、過去の誰かへの思いを相手に重ねることで成立している関係なのか。表面的には同じように見えても、土台が違うのです。うまくいっているときには、どちらも愛情深い関係に見えるかもしれません。しかし、何かトラブルが起きたとき、本当に相手を見ていたのか、それとも相手に何かを背負わせていたのかが表に出てきます。 人間の愛情は、そんなにきれいに割り切れるものではありません。誰でも少なからず、過去の経験を現在の人間関係に持ち込んでいます。完全に転移のない恋愛など、おそらく存在しないでしょう。父親に似た人を好きになる、母親に似た人に安心する、昔の恋人に似た雰囲気の人に惹かれる。そうしたことは、誰にでもあります。 ただ、問題はその強さです。現在の相手を見ている部分よりも、過去の誰かを重ねている部分の方が大きくなりすぎると、関係は不安定になります。相手は父親ではありません。母親でもありません。昔の先生でもありません。今目の前にいる一人の人間です。その人に、過去の満たされなかった思いをすべて背負わせてしまうと、相手も苦しくなりますし、自分自身も傷つきやすくなります。 だから、年の差カップルを見るとき、私は単に「いいな」「悪いな」と判断するのではなく、この二人の関係にはどのような心理が働いているのだろうかと考えます。経済的なメリットがあるのか。社会的なメリットがあるのか。あるいは、親子関係や師弟関係のような過去の記憶が重なっているのか。そうした視点で見ると、年の差恋愛は、人間関係の本質を考える非常によい題材になるのです。 繰り返しますが、年の差があるから駄目だという話ではありません。年齢差があっても、落ち着いた関係を築いている人たちはいます。お互いを一人の人間として尊重し、依存しすぎず、過去の傷を相手に押しつけすぎず、現実的な関係を育てているのであれば、それは十分に成立する関係です。 ただし、年齢差が大きい関係では、どうしても「相手に何を見ているのか」が問われます。若さを見ているのか。安心感を見ているのか。お金を見ているのか。地位を見ているのか。父親を見ているのか。母親を見ているのか。あるいは、本当にその人自身を見ているのか。そこを自分で点検できるかどうかが、とても大切なのだと思います。 恋愛関係は、うまくいっているときには誰でも美しく語れます。問題は、うまくいかなくなったときです。そのときに、相手を一人の人間として見続けられるのか。それとも、過去の傷が噴き出して、相手を責めたり、しがみついたり、破壊的な関係になってしまうのか。そこに、その関係の本当の土台が表れるのです。 今日は、年の差カップルから考える人間関係、そして転移についてお話ししました。人間の心は、今だけでできているわけではありません。過去の記憶、満たされなかった思い、愛されたかった気持ち、認められたかった気持ち、そうしたものが現在の関係に影響しています。だからこそ、自分が誰かを好きになったとき、「私はこの人の何を見ているのだろう」と考えることは、とても大切なのだと思います。 精神科医の芳賀高浩でございました。今日もありがとうございました。