女イカサマ股旅日記 #時代劇・ショート劇場 創作集団・野火
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女イカサマ股旅日記 #時代劇・ショート劇場 創作集団・野火
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時代劇ショート劇場
#演歌・歌謡曲、#時代劇、#ショート劇場、#猫、
女イカサマ股旅日記「流転雲123」
時代劇ショート劇場・創作集団・野火
一つ目の山脈をこえると、小さな集落があった。形ばかりの茶店もあり、三味線鴉と秋太郎は、その茶店で遅い昼飯の蕎麦を二、三杯腹に流し込み、やっと落ち着いた風に一息入れた。
見ると先客が居た。三十絡みの旅の女で、どこか大家の奥方の雰囲気がある。やはりこれから山脈を越えて東海道へ向かうようだ。
三味線鴉が、じっとその女の顔をみつめて、
「ひよっとして、木曽のお糸さんじゃねーか?」
「あらー、気づかなかった、三味線鴉の、新吉さんだよね。こんな処で会うなんて、何やら縁があつたんだろうか・・・」
二人は話込んでいる。同じ木曽の生まれらしい。聴かぬまでも二人の話しは、秋太郎の耳に入ってくるものの、お国訛りが強くて、話の筋道が理解出来無かった。
そしてここから三人連れの旅となったのである。
東海道へ出た。
小森の宿場街。
ここには、三つの侠客が一家を構えている。
女の旅人、お糸は宿場に入ると、秋太郎たちと別れて何処へとなく姿を消した。
「秋太郎さん、何処の一家に草鞋を脱ぎやす? あっしゃあ、何時も「大塚一家」にお世話になってるんですがね。賭場はここが一番賑やいでいやすよ」
「そりゃあ、おめーさんの顔で、草鞋を脱ぎてえ、よろしく、頼みやす。・・・処で、さっき別れた、お糸さんて、女の旅人、同郷の人ですかい?」
「いやー、詳しくはしらねーんだ。三年前に越後の宿場街で逢ったきりだから」
二人は大塚一家に着いた。形式の仁義を切り、二人は部屋に通された。先客の旅人がもう五人も居た。やはり東海道筋になると、それなりに本格的なモノになるようだ。
遅い夕飯を済ませ、三味線鴉は流しの稼ぎで、街中に出て行った。
秋太郎の足は当然、賭場へと向かう。
奥の大広間、多くの客でごった返しているようだ。が、どうも素人衆は少ない。他の組のモノなのだろう、スキあらば居直ろうかという雰囲気。
が、秋太郎が驚いたのは、そんな事ではない。
赤々と照らされる百目ロウソクの中の盆ゴザの中央で、盆を裁いてるのは、今日、道中をともにした、あの、お糸という女ではないか。片肌を脱ぎ、サラシ巻きの胸を大きく露出して。片足を立て、色っぽさを振りまきながら、器用に壺を振っている。
「さあ、張った張った、丁か半か、男度胸で、ここは張ってみな」
客筋は、どうもこの土地の三つの組のモノが競っているようだ。サイの目が大塚一家の連中に付いているのは、どうもゲセない。・・・イカサマでもやらない限り。
この賭場は、どうもこの宿場の三つの組の大がかりな勝負になっているようだ。
秋太郎は、やる気を失せて、部屋に帰り、早々に寝込む事にした。昨日からの疲れも逢ったのだろう。
翌朝、早々に秋太郎は旅だった。
この宿場と、この大塚一家には縁がない。形式の仁義を切っての旅立ち。 街道に出ると、暗い内から、もう人の影が多かった。
陽の昇ったころに、空いてる茶店で一休みする。
朝飯の積りで蕎麦を頼み、胃に流し込んでる処へ、トンと隣りに座った女、見ると、山脈で道連れになり昨夜は賭場で、イカサマバクチの壺を振ってた、木曽の生まれ、お糸である。
「お互い早い旅立ちだねえ。あれ、三味線鴉の新吉さんと一緒じゃないのかい?」
「あの人は、この宿場で、二三日、稼ぐとか云って、残っておりやすよ」
「ふーん・・・。で、お前さん、昨夜、賭場へ顔を出したのに、勝負しなかったようだね、何故なのだい?」
「ははは、俺ぁイカサマにゃ手を出さねえ主義なんでねえ」
「へえー、あたしがイカサマをやってるとでも云うのかい。」
「思った通りにサイの目を出す、あの手練手管は、長年この世界で飯を喰ってきた、この俺にも見破れなかったぜ」
「イカサマ呼ばわりするなんて、女を馬鹿にしてるのかい? なら、ここで掛け値なしの、勝負をしようじゃないか」
「おお、いいとも、まずサイコロは俺が振るぜ」
熱くなった秋太郎は、何時も胸に入れてるサイコロ二つ、さっととりだした。
「この湯飲みで行くぜ」
「あ、上の目をみせなよ」
「ほら、二と五だ」
湯飲みでカラカラと音を立てて三度四度と、秋太郎は振り、パッと番台に伏せた。
お糸は、しばく考えて、
「二、六の、丁」
秋太郎は湯飲みを上げた。するとサイコロの目は、二と六。
「まさか・・・ヨシ、も一度・・・」
熱くなった秋太郎は二度目の壺を振る。その前にお糸は、上の目を聞く。七回やって七回共サイの目を当てた。
「ね、どこがイカサマなんだよ。サイの目を転がしてるのは、お前さんだよ」
「し、信じられねえ・・・、どうして壺の中のサイの目が読めるんだい」
「子供の頃から、オヤジの賭場通いに連れられてね。子守唄がサイコロの歌だった。まず、壺入れの上の目が分かるりゃ、後は振り方で計算出来るのさ」
「し、しんじられねえ」
「さ、貰う物を貰うよ。七回共私の目だったから、一回一両として、まず七両・・・」
「けっ、そんな約束はしてねえぜ」
そこへ茶店のオヤジが渋い顔をして二人の前に立った。
「お二人さん、こんな処でバクチをやるなんて、恐れ多いにも程がある。今、小僧に役人を呼びに生かせたから、逃げるんじゃないよ」
秋太郎は蕎麦代を置き、合羽に三度笠を手早くにぎり、街道へと走り出た。
「お待ちよ、逃げるのかい、この賭場あらしーーー うふふ、血相変えて逃げ出したよ・・・。秋太郎さーん、ただ、一緒に旅がしたいだけなんだよーーー、待っておくれーーー」
秋太郎は闇雲に走って逃げた。
白刃をくぐる渡世の中で、信じられない、一番の恐怖を五体に感じ、やみくもに、走りに走った。
見上げりゃ寒い 神無月
夜烏鳴いて 塒(ねぐら)へ急ぎゃ
別れた女の ぬくもりが
やけに恋しい やけに恋しい
北国野宿