ネブカドネザル|「7年間、獣になった」と書かれた王は、実際に何をやったのか【真夜中の禁書庫】
真夜中の禁書庫
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ネブカドネザル|「7年間、獣になった」と書かれた王は、実際に何をやったのか【真夜中の禁書庫】
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バビロンの王、ネブカドネザル。名前だけは誰もが知っています。そしてこの王について
いちばん有名なのは、「七年のあいだ正気を失い、獣のように草を食べた」という一行です。
ところが、この王が自分で残した記録はレンガと石に刻まれて数千点あるのに、そのどこにも
その七年は出てきません。大英博物館にある東インド会社碑文は、十の欄に六百十九行。王が
刻ませたいちばん長い記録ですが、書かれているのは建物のことだけです。どの神殿の屋根を
金で葺いたか、どの運河を掘り直したか。エルサレムを落としたことも、神殿を焼いたことも
書かれていません。狂気の七年だけが、そこにぽっかり無いのです。
書いたのは、この王に連れ去られた側でした。紀元前605年の即位、二度のエルサレム攻め、
およそ50年のバビロン捕囚、一周18キロの城壁、深い青のイシュタル門。王の生涯をまるごと
通したうえで、なぜその一節だけが二千六百年も語り継がれたのかを追いかけます。死海文書
「ナボニドスの祈り」に出てくる、もう一人の王の七年にも触れます。
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出典:
・ネブカドネザル2世:新バビロニア(カルデア)王国第2代の王。紀元前605年即位、前562年没、
・在位43年。父ナボポラッサルは前626年にバビロンで独立し、前612年にアッシリアの都ニネヴェを
・陥落させた。
・カルケミシュの戦い(前605年):北シリアで王太子時代のネブカドネザルがエジプト軍を破る。
・同年に父が死去し、急ぎ帰国して即位した。カルケミシュ(現シリア北部ジャラーブルス付近)
・からバビロンまでは直線でおよそ800キロ。
・バビロン年代記(大英博物館 BM 21946、ABC 5):治世第7年、アダルの月2日に「ユダの町」を
・陥落させ王を捕らえたと記す。ユリウス暦換算で紀元前597年3月16日。旧約聖書の出来事の日付が
・同時代の外部史料で日単位に確定できる稀な例。
・第二次エルサレム攻囲(前587/586年):約1年半の包囲ののち城壁と神殿が破壊される。
・列王記下25章・エレミヤ書39章/52章に、ゼデキヤ王の子らの殺害と王の失明が記される。
・連行された人数:エレミヤ書52章28〜30節。3,023人/832人/745人、合計4,600人を三度に分けて
・記録する。捕囚の終わりは前539年のバビロン陥落と、キュロス2世による帰還許可(前538年)。
・バビロンの城壁:内壁イムグル・エンリル厚さ約6.5メートル、外壁ネメティ・エンリル厚さ約3.7
・メートルの二重構造。東岸の外郭防壁を含めた周囲は約18キロとされる(学説により幅がある)。
・行進路(プロセッション・ウェイ):幅およそ20メートル。両側の壁に施釉レンガのライオンの
・浮き彫りが約120頭並ぶ。
・イシュタル門:都の北の入口。高さ約12メートル。コバルト系の青色施釉レンガに、竜シルシュ
・(ムシュフシュ、マルドゥクの聖獣)と野牛(アダドの聖獣)のレリーフが計575体。1899年から
・1917年にかけてロベルト・コルデヴァイ率いるドイツ東洋協会が発掘し、部材をベルリンへ搬送。
・ペルガモン博物館に原寸で再建(1930年公開)。再建されたのは手前の小さい門のみで、より大きな
・奥の門の部材は展示室に収まらず、未組立のまま保管されている。
・エテメンアンキ:バビロンのジッグラト。ナボポラッサルとネブカドネザル2世が再建。のちに
・バベルの塔と同一視される。※本回では「この王が積み直した」以上には踏み込まない(8/07の回と
・同じ塔の説明を繰り返さないため)。
・空中庭園:ネブカドネザルが妻のために造らせたとする伝承は、ベロッソスなど後代のギリシャ語
・文献に由来する。バビロン現地の同時代史料には記載がない。
・東インド会社碑文(East India House Inscription、大英博物館 BM 129397):ネブカドネザル2世の
・最長の建築碑文。10欄・619行。内容はほぼ全て神殿・城壁・運河などの造営と奉納で、軍事遠征の
・記述を欠くことで知られる。
・刻印レンガ:「ネブカドネザル、バビロンの王、エサギラとエジダを養う者」の定型句を押した焼成
・レンガが、バビロン各所から大量に出土する。
・ダニエル書4章:王が「七つの時」のあいだ人から追われ、牛のように草を食べ、髪は鷲の羽、爪は
・鳥の爪のようになったと記す。書物としての成立は紀元前2世紀(前165年ごろ)とするのが通説で、
・王の死から約400年後にあたる。
・「ナボニドスの祈り」(死海文書 4Q242、クムラン第4洞窟):バビロン王ナボニドスがテマ
・(タイマー)の地で7年間、悪性の病に苦しんだと記す断片。ダニエル書4章との関係が古くから
・指摘されている。
・ナボニドス:新バビロニア最後の王(前556〜539年)。前553年ごろからアラビアのテマに約10年
・滞在し、バビロンを離れていたことが同時代の楔形文字史料から確認されている。
・名前の後世への残存:日本のアニメ作品に王の名を冠した用語が、アメリカ映画には王の名を付けた
・船が登場する。※本回では名前が現代まで残っている例として触れるだけで、作品の内容には
・踏み込まない。