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【新聞記者が「天文学者が月に羽のある人たちを見た」と六日間書き続け、当の天文学者は何も知らずに南アフリカで星を数えていた】月の大でっち上げ——四つの言葉で届いた問い合わせ

真夜中の資料室

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【新聞記者が「天文学者が月に羽のある人たちを見た」と六日間書き続け、当の天文学者は何も知らずに南アフリカで星を数えていた】月の大でっち上げ——四つの言葉で届いた問い合わせ

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真夜中の資料室
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1835年8月、ニューヨークの新聞サンは「天文学者ジョン・ハーシェルが巨大な望遠鏡で、月の森と羽の生えた住人を見た」という記事を6回にわたって連載しました。記事は架空の博士と、すでに発行の止まっていた雑誌を出典にした作り話でした。当のハーシェルは、南アフリカの喜望峰で何も知らずに南の空の星を調べていました。今夜は、記事が信じられた理由、見破られた決め手、あとから足された俗説、そして名前を使われた天文学者のその後をたどります。 0:00 月に羽の生えた人 0:38 一セントの新聞 1:13 喜望峰の天文学者 1:48 7トンのレンズ 2:28 月の森と動物たち 2:59 羽を持つ人たち 3:32 燃えた観測所 3:59 月の住人四十二億 4:33 廃刊していた雑誌 5:05 あとから足された話 5:41 何も知らない本人 6:12 出されない手紙 6:47 書いた男の告白 7:20 どの一文で気づくか ■ この回で扱うこと ・1833年創刊、1セントで買えるニューヨークの新聞サンと、記者リチャード・アダムズ・ロック ・1833年11月にイギリスを発ち、喜望峰で望遠鏡を組み立てたジョン・ハーシェル ・8月21日の予告と、8月25日から31日までの連載(全部で約1万7千語) ・「エディンバラの科学雑誌の付録から転載」という触れこみと、実在しないアンドリュー・グラント博士 ・直径約7mのレンズ、7トン、倍率4万2千倍という設定 ・月の森と湖、バイソンに似た獣、一本角のヤギ、二本足で歩くビーバー ・8月28日、4回目の記事に登場した羽のある人たち(平均約120cm・銅色の短い毛・膜の羽) ・太陽の光でレンズが観測所に火をつけた、という結末 ・月の住人を42億と見積もったスコットランドの牧師トマス・ディック ・ライバル紙が突いた「転載元の雑誌はもう発行が止まっていた」という決め手 ・エール大学の天文学者の来社や、部数の急増という、あとから足された話 ・アメリカの興行師に記事を見せられたハーシェルと、「英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語で」悩まされたという手紙 ・2001年に見つかった、出されなかった否定の手紙(1836年8月21日付) ・1840年のロックの告白と、1891年にブルックリンの建物の土台の箱から出た月の動物の版画 ■ 扱いについて 事実と、後世に足された俗説を分けて紹介しています。エール大学の天文学者たちが元の雑誌を見せろと新聞社に押しかけたという話は20世紀になって出てきたもので、当時の投書が来訪を否定しています。サンは8月28日に19,360部と書きましたが、もともと2万部前後は出ていたとみられ、8千部から急増したという話は誇張とされています。新聞の連載は文字だけで、羽のある人たちの絵は小冊子や別売りの版画のものです。エディンバラの科学雑誌は実在しましたが、すでに発行が止まっていました。サンが作り話だと認めたかどうか、その日付は資料で割れるため扱っていません。ハーシェルは最初は笑ったと伝えられ、公に抗議したのではなく、否定の手紙を書いたものの出していません。映像の月の住人の絵は、作り話の記事をもとにした当時の想像図です。 【主な参照】 ・The Sun(ニューヨーク)「Great Astronomical Discoveries Lately Made by Sir John Herschel」1835年8月25日〜31日の連載 ・Locke, R. A.『The Moon Hoax; or, A Discovery that the Moon has a Vast Population of Human Beings』William Gowans (1859)(Smithsonian Libraries 所蔵本のデジタル版) https://archive.org/details/moonhoax0... ・Locke, R. A. 月の記事についての告白, The New World(1840年5月16日) ・Herschel, J. F. W.『Results of Astronomical Observations Made during the Years 1834, 5, 6, 7, 8, at the Cape of Good Hope』Smith, Elder & Co. (1847) ・Ashworth, W. B. Jr.「Scientist of the Day — Richard Adams Locke」Linda Hall Library https://www.lindahall.org/about/news/... #月の大でっち上げ #天文学史 #フェイクニュース #真夜中の資料室 【画像出典】 ・Scoperte fatte nella luna dal Sig.r Herschell (BM 1953,1107.5) / 作者不明 / Public domain(1836年ナポリのリトグラフ「ハーシェル氏の月での発見」。大英博物館蔵の想像図) ・Moon Hoax 1859 NY William Gowans / Richard Adams Locke ほか / Public domain(1859年ウィリアム・ゴーワンズ版『The Moon Hoax』の表紙) ・Sir John Herschel MET DP295233 / Julia Margaret Cameron / CC0(ジョン・ハーシェルの肖像写真) ・Results of astronomical observations の挿絵 / J. F. W. Herschel / Public domain(ハーシェル自身の観測報告にある、喜望峰の20フィート反射望遠鏡) 音声: VOICEVOX(四国めたん / ずんだもん)/ 立ち絵: 坂本アヒル様 / BGM: 甘茶の音楽工房 / 効果音: 効果音ラボ / 背景動画: Pexels