名古屋豪雨、1時間104ミリでなぜ川は切れず街だけが沈んだのか【ずんだもん&ゆっくり解説】
ずんだもんの土木ファイル
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名古屋豪雨、1時間104ミリでなぜ川は切れず街だけが沈んだのか【ずんだもん&ゆっくり解説】
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2026年9月8日の夕方、名古屋で1時間に104.5ミリの雨が降りました。1890年に統計が始まってから、いちばん強い1時間です。2000年9月の東海豪雨のときは、同じ数え方で97.0ミリでした。
ところが、あのとき切れた川は、今回は切れていません。
東海豪雨では新川の堤防が名古屋市西区で切れ、庄内川の水は一色大橋の下流で堤防を越え、流域で19平方キロ・18,000戸超が浸水しました。今回、庄内川本流の枇杷島観測所は7.99メートル。氾濫危険水位8.90メートルに届かず、警戒レベルは2どまり(東海豪雨の9.36メートルより約1.4メートル低い)。レベル5が出たのは支流の矢田川(瀬古)でした。
代わりに水が出たのは、川から離れた栄の地下街と地下鉄の駅でした。地下鉄は17時15分までに全線が止まり、川の警報はそのあとの18時20分。順番が、通説と逆です。
この動画は、その「順番」を2つに分けて解きます。
1つ目は川。1784年に尾張藩が名古屋城下を守るために造った「新川洗堰」(庄内川の堤防をわざと低くして大水のとき新川へ逃がす仕掛け)を約1メートル嵩上げし、新川へ流れ込む水を最大毎秒270立方メートルから70へ減らしました。増える庄内川の水は河道掘削と堤防強化で受け、小田井遊水地(約42ヘクタール・約140万立方メートル・ふだんは庄内緑地)も作り直しました。枇杷島の狭窄部は橋3本の架け替えと引堤が今も工事中で、つなぎに「越水しても決壊しにくい堤防」が造られています。
2つ目は街。名古屋市の下水道は「1時間63ミリ」が目標(全国の大都市と同水準)で、104.5ミリはその1.66倍。東海豪雨のあと雨水の貯留量は約14万→約87.5万立方メートル(6.3倍)、ポンプ排水能力は毎分約51,300→約64,700立方メートル(1.3倍)へ増え、栄の地下50メートルには全長約5キロ・約10万4,000立方メートルの名古屋中央雨水調整池があります。それでも名古屋市全体(326.46平方キロ)に104.5ミリが降ると約3,400万立方メートル。ポンプ全力1時間で出せるのは約11%、貯留を全部使っても約3%。残りは街のいちばん低い場所へ集まります。栄でいちばん低いのは、地下街の入口でした。
もうひとつ。名古屋市には、川の水位が危険な高さになると排水ポンプを止める「運転調整」の決まりがあります。堤防を守るための処置で、止めるときは避難指示が出ます。9月8日、名古屋市上下水道局は一部の排水ポンプの運転を止めたと発表しました。どの川の水位が引き金だったかは、この動画の制作時点では公表されていません。
川を守る設計と、街に水が残る設計は、同じ1枚の図面の表と裏です。東海豪雨で名古屋駅前の地下街は自分の出入口を止水板で守り切りましたが、地下通路でつながる隣のビルが板を立てず、そこから水が入りました。地下街は、自分の入口だけ守っても守れません。
名古屋市の次の図面(1時間約100ミリの雨で床上浸水をおおむね解消)は、2019年度から約30年の計画です。
※本動画は公開情報(気象庁の観測値と庄内川洪水予報の原文、国土交通省 中部地方整備局 庄内川河川事務所、名古屋市上下水道局、国土交通省「地下空間における浸水対策ガイドライン」、内閣府、愛知県の発表を報じた報道ほか)をもとにした解説です。被害の数字は2026年9月9日朝時点の愛知県の発表で、その後増えている可能性があります。数字は2026-09-11時点で確認したものです。
▼登録
つぎの1本も見逃したくない方は、チャンネル登録をどうぞ。
https://www.youtube.com/@zundamon_dob...
気になる構造物があれば、コメントで教えてください。次のファイルの候補にします。
▼目次
0:00 川ではなく 街から
0:30 9月8日の名古屋
2:59 240年前の仕掛け
4:31 水位計が持つ答え
6:34 街の水の行き先
9:15 表と裏
※時間は目安です。
▼気になる構造物はコメントで
「あのダムはなぜ壊れないの?」「このトンネルはどう掘ったの?」という構造物があれば、地元の小さな橋でも、世界の巨大構造物でもかまいません。ぜひコメントで教えてください。
▼出典・参考
気象庁 過去の気象データ検索「名古屋 2026年9月/2000年9月 日ごとの値・時別値」(104.5mm=観測史上1位/日降水量219.5mm/東海豪雨 97.0mm・428.0mm+138.5mm)
https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/...
庄内川河川事務所・名古屋地方気象台 共同発表「庄内川洪水予報 第5〜9号」(矢田川 瀬古 6.35m/枇杷島 最高7.99m・氾濫危険8.90m)
https://www.jma.go.jp/bosai/flood/dat...
国土交通省 中部地方整備局 庄内川河川事務所「東海豪雨20年」(総雨量567mm/新川の決壊・庄内川の越水/浸水19km²・18,000戸超/枇杷島9.36m/激特事業)
https://www.cbr.mlit.go.jp/shonai/tok...
同「新川の開削と洗堰」(1784年・徳川宗睦・堤防73mを半分の高さに)
https://www.cbr.mlit.go.jp/shonai/tan...
同 土岐川庄内川流域委員会 資料-5(1)(洗堰 T.P.+9.0m→+10.0m/新川への最大越流量 約270→約70m³/s)
https://www.cbr.mlit.go.jp/shonai/stu...
同「小田井遊水地」(面積約42ha・約140万m³=ナゴヤドーム約0.8杯分・ふだんは庄内緑地)
https://www.cbr.mlit.go.jp/shonai/tok...
同「枇杷島地区狭窄部対策」(3橋梁の架替え+引堤・継続中/つなぎの「粘り強い河川堤防」=越水しても決壊しにくい堤防)
https://www.cbr.mlit.go.jp/shonai/tok...
名古屋市上下水道局「ともにつくる 大雨に強いまち なごや」(1時間63mmで浸水被害をおおむね解消/1時間約100mmで床上浸水をおおむね解消/2019年度〜約30年)
https://www.water.city.nagoya.jp/cate...
名古屋市上下水道局「緊急雨水整備事業」(ポンプ排水能力 約51,300→約64,700m³/分/雨水貯留量 約140,000→約875,000m³)
https://www.water.city.nagoya.jp/cate...
名古屋市上下水道局「名古屋中央雨水調整池 工事概要」(地下約50m・全長約5,000m・貯留量約104,000m³)
https://www.water.city.nagoya.jp/cate...
名古屋市上下水道局「排水ポンプの運転調整」(川の水位が危険な高さになると排水ポンプを止める/止めるときは避難指示が発令される)
https://www.water.city.nagoya.jp/cate...
名古屋市「名古屋市の面積」(326.46km²)
https://www.city.nagoya.jp/kids/about...
国土交通省「地下空間における浸水対策ガイドライン」(東海豪雨の事例=名古屋駅前地下街は隣接ビルの地下通路から浸水)
https://www.mlit.go.jp/river/basic_in...
内閣府 中央防災会議 資料「東海豪雨災害」(死者10人・床上22,894棟・床下46,943棟)
https://www.bousai.go.jp/kaigirep/chu...
中日新聞「東海地方豪雨」(愛知県の被害まとめ・9月9日7時時点)
毎日新聞・読売新聞・メ〜テレの報道(栄の地下街・地下鉄栄駅の浸水/17時15分 全線運転見合わせ)
▼画像クレジット(Wikimedia Commons)
栄・オアシス21とテレビ塔・© Emran Kassim / Wikimedia Commons (CC BY 2.0)
地下鉄栄駅の改札・MaedaAkihiko / Wikimedia Commons (CC0)
栄の地下街・© 円周率3パーセント / Wikimedia Commons (CC BY-SA 4.0)
名古屋市営地下鉄 栄駅のホーム・MaedaAkihiko / Wikimedia Commons (CC0)
庄内川と名古屋の市街・© KKPCW / Wikimedia Commons (CC BY-SA 4.0)
庄内川の広い河川敷(城北大橋付近)・© Alpsdake / Wikimedia Commons (CC BY-SA 3.0)
新川洗堰・© KAMUI / Wikimedia Commons (CC BY-SA 3.0)
洗堰緑地から見た新川洗堰・© full moon69 / Wikimedia Commons (CC BY 3.0)
2000年9月 東海豪雨で水に浸かった西枇杷島駅・国土交通省 / Wikimedia Commons (CC BY 4.0)
2000年9月 東海豪雨の浸水(空撮)・国土交通省 / Wikimedia Commons (CC BY 4.0)
名古屋市 露橋水処理センター・© 円周率3パーセント / Wikimedia Commons (CC BY-SA 4.0)
テレビ塔から見た名古屋駅方面の街・© Alpsdake / Wikimedia Commons (CC BY-SA 4.0)
枇杷島橋と庄内川・© Alpsdake / Wikimedia Commons (CC BY-SA 4.0)
積まれた土のう・© Shift / Wikimedia Commons (CC BY-SA 3.0)
サムネイル背景: 地下鉄栄駅の改札・MaedaAkihiko / Wikimedia Commons (CC0) ※トリミング・文字合成
地図: 国土地理院(色別標高図・海域部は海上保安庁海洋情報部の資料を使用して作成)
図解(洗堰・遊水地・ポンプの流れ・水位の比較ほか)は本チャンネル作成
▼クレジット
音声:VOICEVOX:ずんだもん/VOICEVOX:東北イタコ/VOICEVOX:玄野武宏
BGM:DOVA-SYNDROME(https://dova-s.jp)