竹村ゆうい「ココの匂い」Official Audio
竹村ゆうい めぐろくらぶ
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竹村ゆうい「ココの匂い」Official Audio
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竹村ゆうい めぐろくらぶ
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2008年12月12日、ココが死んだ。
ココがうちにやってきたのは、2001年5月。
北千住にある「とりのぶ」という店で売られていた雑種の猫。
毛並みから、アメショーとペルシャのハーフじゃないかと思われたその猫を、僕が「ココ」と名付けた。
素敵な名前だと思った。
一緒に寝ていてもすぐに移動してしまうし、たまに噛み付かれたりもする。
今まで飼ってきた中でも、特別わけのわからない猫だった。
でも、僕の人生の中で一番多くの時間を過ごしてきた猫。
うちの家族が住んだ全ての家を知っている猫だった。
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ココより前に、うちには「リズ」という猫がいた。
メスだと思って付けた名前だったけど、名付けた後でオスだとわかった。
自由に家の中と外とを行き来する猫だったけど、僕のあとをいつも付いてきた。
風呂やトイレに入ればドアの前で座って待っていて、寝る時はいつも僕のベッドで寝ていた。
ある日、リズが初めて小鳥を捕まえてきた。
小学生だった僕は少し怖くて、自分の部屋に入れないようにガラス戸を閉めた。
少し経ってから居間を覗くと、羽根だけが散らばっていた。
それが少し気持ち悪く思えて、リズに素っ気ない態度をとってしまった。
その2日ほど後。
翌日に熱海への家族旅行を控え、家族で近くの居酒屋へ出掛けていた。
僕は早く帰りたかった。
もしかしたら嫌な予感を感じていたのかもしれない。
家に帰ると、道路の真ん中に横たわっているものが見えた。
近寄るまでもなく、一瞬でリズだとわかった。
まだ微かに命の灯火がゆらめいていたからなのかもしれない。
もしかしたら必死に僕へ呼び掛けていたのかもしれない。
「あれ、リズだよ!」
もう助からないことを悟った僕は、その事実を受け止められず、自分の部屋に逃げ込んだ。
父がリズを道路脇に運んでくれた。
まだ息があった。
父が最期を看取り、木の根元に埋葬してくれた。
その時には思えなかったけど、後になって後悔した。
リズの最期を看取ってあげられなかったこと。
まだ幼い僕には強さがなかったんだと思う。
生きるということ、死ぬということに向き合う強さが。
今ならきっとその強さを持てていると思う。
まだ遅くないかな。
その時、父がこう言った。
「昔から飼い猫や飼い犬は、その家の不幸を背負ってくれるって言うから、
リズは雄尉や妹の代わりに不幸を背負ってくれたんだよ」
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2007年2月。
世田谷のマンションから家出同然で引っ越した時、ココに感謝したいことがある。
夜中に、部屋に残った荷物を運び出しに来た。
ココに会うのも最後になるなぁと思い、すっからかんになった部屋のベッドでココと一緒に寝た。
写真を撮って、ココに寄り添って寝転がっていたら、いきなり壮絶に引っ掻かれた。
左腕が血まみれになった。
止血をしていたら朝になり、父が起きてきた。
「なんだ、いたのか」
何ヶ月振りの会話だった。
それから少し話をして、母が朝食を出してくれた。
何ヶ月か振りの家での食事。
口にした瞬間、涙が溢れてきた。
そこで話が出来たから、今の状況があるんだと思う。
ココが繋いでくれたのかなぁと思う。
- - - - - - - -
2008年10月8日。
妹から哀しすぎる知らせが届いた。
「ココ肺癌だって」
「もう手遅れだって…」
癌が肺全体に転移していて、もう手術もできない。
抗がん剤も打てなくて、痛みを和らげる薬の投与と栄養補給しかできない。
次第に痛みが出始めて、ただ死ぬのを待つしかできない。
どうして今じゃなければならないんだろう。
その日、リズが死んだ時に父が言った言葉を思い出した。
そして夜、ココのためにまぐろの刺身を持って実家に行った。
少しだけ食べてくれた。
今にも吹き消されそうな命の灯を、僕はじっと見ていることができるだろうか。
ちゃんと向き合わなきゃいけないよな。
もう後悔はしたくないから。
ココ、ごめんな。
会いに来て身体を撫でてあげるくらいしかできないんだ。
とりあえず今は一緒に寝ようか。
- - - - - - - -
2008年12月12日。
午前1時頃、ココに大きな発作がきた。
ココがいつもと違う呻き声をあげている。
肺を目一杯収縮させて、舌は絶えず出しっ放しで、目を最大限まで見開いて、
呼吸なんてまともに出来やしない。
このまま命が終わるのかと思った。
定まったままのココの目線の中に自分を映した。
次第に動きが小さくなって、じんわり涙が込み上げてきた。
まだ泣くのは早いからと、必死で堪えた。
最期の時を迎える決意と、まだ諦めたくないという希望の両方が僕の中にはあった。
このまま小さく固まってしまうように思えた矢先、
ココが舌なめずりをしてみせた。
ほっと胸を撫で下ろす瞬間。
ココ、ココ、ココ。
- - - - - - - -
6時半に寝て、7時に父に起こされた。
「ココ死んじゃったよ」
つい数時間前の発作でもう先が長くないのはわかっていた。
最期にもうひと頑張りして、ソファーを乗り越えた。
その陰で丸まっていた。
そこはいつもの隠れ場所。
ココが選んだ最期の場所。
やっぱり一番に思い出したのは、家を出る時にめいっぱい引っ掻かれたことだった。
それがなかったら、きっと今の僕と妹はいない。
ココが繋いでくれたんだね。
2008年12月12日朝。
ココ、永眠。
- - - - - - - -
母が、硬直しかかっているココを抱かせてくれた。
あんなに軽くなっていたのに、今となればずっしりと重く感じる不思議。
僕が優しく頭を撫でていると、父が毛が逆立つくらい大きく力強くココを撫でた。
愛情の伝え方に間違いも正解もない。
父は、集まってきた野良猫たちにも、明るく泣きながら声を掛けた。
「うちのココちゃん死んじゃったぞ。
残りのシーバ全部食べていいからな」
それがうちの家族の在り方なんだと感じた。
- - - - - - - -
その夜、僕は京都に発つことになっていた。
「雄尉、ちゃんとココにお別れしておけよ」
父にそう言われ、ココを覆っていたブランケットをめくった。
ココの小さな身体を、両手で確かめるようにゆっくりと何度も撫でた。
耳。
額。
眉。
鼻。
髭。
口。
歯の隙間から零れている舌。
喉。
首。
背中。
肺と肋。
腹。
前脚。
後ろ脚。
硬直が進んでいた身体だけれど、モコモコした尻尾だけは変わっていなかった。
もうすぐ自分を映すことも叶わなくなるつぶらな瞳を、忘れないように強く焼き付けた。
そして、ココの匂いを隅々まで確認した。
口元は離乳食の匂いしかしなかったけど、ついさっきまで不安定な呼吸をしていた証だった。
今も右手に残るその匂いが一生消えなければいいのに。
ココに最後にかけた言葉。
不定期な発作で息苦しい夜を過ごしていた近頃は、安心して眠れなかっただろうから。
自らの死期を悟ってからは、少しの物音にも驚いた反応をしていたから。
その言葉は自然と出たものだった。
「ココ、おやすみ」
- - - - - - - -
あれから18年。
2007年、2008年に書いた日記を読み返しながら、この曲を作りました。
タイトルは、ココが亡くなったその日に書いた日記と同じ、
『ココの匂い』
ココの命日、12月12日にちなんで、
2026年10月8日 12時12分にOfficial Audioを公開します。
また会えるかな、ココ。
■ 『ココの匂い』
歌:竹村ゆうい (AI Voice)
作詞:竹村ゆうい
作曲・編曲:Suno AI
■ 制作について
楽曲制作には生成AI「Suno」を活用しています。
ボーカルには、竹村ゆうい本人の歌声をVoiceサンプリングしたAI Voiceを使用しています。
■ Lyrics
「ココ死んじゃったよ」
いつかの5月 うちにやってきた
ココと名付けた 雑種のねこ
すぐ何処かへ行く たまに噛み付く
わけのわからない ねこだった
家を出ようとしたあの日
最後のつもりで一緒に寝た
目一杯 引っ掻かれた
血が止まる頃に朝が来た
「なんだ、いたのか」 父が言う
朝ごはんが涙でにじむ
久しぶりの家族の時間
ココが繋いでくれたんだ
「ココ肺がんだって」
「もう手遅れだって…」
ただ死ぬのを待つしかできない
どうして今なんだろう…
ちゃんと向き合わなきゃな
もう後悔したくないから
あの日のことを思い出す
リズっていう灰色のねこ
いつかの8月 うちにいなかった
嫌な予感 早く帰りたい
目黒通りに 横たわる影
間違いない あれはリズだ
怖くて 怖くて 悲しくて
駆け出しベッドに潜り込んだ
待っていたのは 僕だったのに
父親が最期を 看取ってくれた
「飼い犬や飼い猫はその家の
不幸を背負ってくれるんだよ」
リズが死んだ日 父の言葉
ずっと心の真ん中に残ってる
ココが呻き声をあげている
肺を目一杯 縮ませている
見開いた瞳に 僕を映した
泣くのは早い 必死で耐えた
「ココ死んじゃったよ」
ソファーの陰で丸まってた
いつもの隠れ場所
選んだ最期の場所
あんなに軽くなった身体
腕の中では ずっしり重い
僕は優しく 頭を撫でた
父は力強く 身体を撫でた
耳も額も眉も 鼻も髭も口も
舌も喉も首も 背中も肋も腹も
前脚も後ろ脚も モコモコの尻尾も
たしかめるように 両手で撫でた
もう僕を映すことのない瞳を
忘れないように 強く焼き付けた
ココの匂い
今も右手に残る匂い
一生消えなければいいのに
「ココ、おやすみ」
また会えるかな ココ
© 2026 竹村ゆうい
#竹村ゆうい #ココの匂い #OfficialAudio