「自白すれば立件減らす」身に覚えのない罪で突然逮捕 30代男性が密室で追い詰められた違法な取り調べ なくならないえん罪の背景にも
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佐賀県警の捜査員から身に覚えのない容疑で違法な取り調べを受けた男性が、その詳細を証言しました。
「認めた方が楽」「死にたい」・・・密室で追い詰められていった男性は今でも当時のことを考えるといいます。
警察などの捜査機関が容疑者や参考人に対して行う取り調べをめぐっては、捜査員の不適切な言動や行為が度々明らかになっています。
男性の証言から浮かび上がってきたのは、「密室化」された取調室の現状でした。
工事現場の信号機を盗んだとして逮捕された男性
福岡県内の男性(30代)
「あっち(警察)のいうようにやっていたらどうなっていたんだろう、今頃何をしていたのかなというのは考えますね」
こう振り返るのは、福岡県に住む30代の男性です。
2021年1月、他の人物と共謀して工事現場の信号機を盗んだとして、窃盗の疑いで佐賀県警に逮捕されました。
別の容疑でも再逮捕され、身柄を拘束される勾留期間は、40日に及びました。
その間、男性の取り調べの担当をしたのは、佐賀北警察署に所属する巡査部長でした。福岡県内の男性(30代)
「信号機を盗んだということになっていて信号機はその辺にある信号機だと思っていて、あれをどうやって盗るんですかという話をしていたら『工事現場の信号機だった』とそこでそういうことと僕は思って、何もしてませんという話をしていて」
男性に巡査部長が持ちかけた「取り引き」
男性は当初、容疑を否認していましたが、弁護士の助言を受け、黙秘に転じました。
すると、巡査部長は、ある「取り引き」を持ちかけてきました。
巡査部長
「しゃべってくれるなら(勾留延長は)10日を付けずに5日くらいでいけるかもしれん。立件もなるべくせんどこうかな。北署でエースだからある程度の権限はある」
「自白すれば立件を減らす」というのは利益誘導にあたり、違法な取り調べです。
福岡県内の男性(30代)
「『北署のエース』というのがインパクトがあって。『罪を重くするも軽くするも自分が決められる』のは言っていました」
男性が驚いた「供述調書」の中身
そして、男性を最も驚かせたのは、巡査部長が示した「供述調書」でした。
当時の調書には、事件について否認や黙秘を続けていたはずなのに、「盗んだことは間違いありません」と記されています。
男性はこの「自白調書」にサインをするよう、執ように求められました。福岡県内の男性(30代)
「(供述調書に)『サインをしてくれ』と2~3時間続いて、サインはできませんと言うと、『どこをやりなおしたほうがいい?』と。ぜんぶ嘘なのでちがいます、と言っても『サインしてくれサインしてくれ』というやりとりが2~3時間」
「死にたい」「きつい」追い詰められていく男性
当時、男性が記録していたメモには、「死にたい」「きつい」といった言葉が並び、取り調べによって精神的に追い詰められる心情が残されていました。福岡県内の男性(30代)
「きつかった。やったっていえば信じるけれど、『本当のこと話してくれ』本当のこと話して『だめだ』と言われるのでそっちのほうが楽なのかなというのはずっとおもっていました」
記者
「無実を訴えるよりも、やりましたって言った方が楽になると思っていたということですか?」
福岡県内の男性(30代)
「楽になると思いました。取り調べに行くのも嫌だった」
男性は結局、供述調書にサインをしませんでした。
裁判所が「違法な取り調べ」と認定
その後検察によって不起訴処分となり、佐賀県に慰謝料などの支払いを求める裁判を起こしました。
2審の福岡高裁は2025年12月、黙秘権を侵害する取り調べだったとして、「違法性」を認定。
佐賀県に対しておよそ44万円の賠償を命じました。
判決は2026年1月に確定しました。裁判所に「違法」と認定された佐賀県警は・・・佐賀県警 福田英之 本部長
「取り調べについては引き続き適正な実施に努めてまいりたい。改めて緻密な捜査とか適正な取り調べについてしっかり教養して意思統一を図った」
なくならない「違法な取り調べ」背景に”密室”
なぜ男性が体験したような「違法な取り調べ」が行われるのか。
男性を担当した弁護士は、「密室」での取り調べが背景にあると指摘します。出口聡一郎 弁護士
「(今回)警察官自身が自白を取りたいということを法廷で述べて、自白調書を真実かどうかも確かめずにとりあえずつくってしまうんだと、それから真実かどうか確かめればいいじゃないかという証言をしていますので意識の低さが明らか。可視化の申し入れ、『警察段階で密室でやるとえん罪が生まれますよ、危険があるのでどうにかしてほしい』『録音録画をしてください』と申し入れをするんですけれど、絶対にすることはない」
取り調べの録音・録画 全事件のわずか3%
日本では不適切な取り調べが相次いだことを受け、2019年から取り調べの録音・録画が義務づけられています。
しかし、義務化の対象となっているのは、裁判員裁判になる重大事件や、検察の独自捜査事件などに限られ、全事件のたった3%と言われています。
検察で対象以外の事件でも録音・録画の運用が進む一方、警察では多くが捜査員と容疑者だけの「密室」での取り調べとなっているのが現状です。
「取り調べの可視化に警察庁幹部は慎重姿勢
法務省では2025年12月から、取り調べの可視化を拡大すべきか議論が続いていますが、警察庁の幹部は、慎重な姿勢を示しています。
警察庁幹部
「取り調べの録音・録画につきましては任意性の立証等に資する反面、被疑者の供述が得られにくくなるといった弊害も認められる」
12人が無罪になったえん罪事件 被害者が訴える密室での”拷問”
取り調べの可視化拡大に対し賛否が分かれるなか、福岡市では2026年2月、弁護士会によるシンポジウムが開かれました。
会場には、えん罪被害者で、取り調べの可視化を求め運動を続けている、川畑幸夫さんの姿もありました。志布志事件 えん罪被害者 川畑幸夫さん
「私がしゃべるとテーブル叩いてしゃべるな、認めろとそんな形で密室の中で拷問ですね」
川畑さんは2003年、鹿児島県議の選挙をめぐって公職選挙法違反の疑いで鹿児島県警から取り調べを受けました。当時、警察官が、「親からの言葉」を紙に書き、川畑さんに足で踏ませ自白を促す、違法捜査が行われました。その後、川畑さんを含む12人に無罪判決が言い渡され、「志布志事件」として、取り調べのあり方をめぐる議論に大きな影響を与えました。志布志事件 えん罪被害者 川畑幸夫さん
「録音・録画、弁護士の立ち会いをできれば早期にしていただきたいと思います。えん罪は起きないと思います」志布志事件を担当した 野平康博 弁護士
「えん罪事件の多くは自白を強要されて自白を取られて、彼ら(捜査機関)の思う通りの自白が取られてしまって結果えん罪になる。真相解明機能を高めるためにむしろ可視化が必要だと思います」
「時間は取り戻せない」悲痛な訴え
佐賀県警から違法な取り調べを受けた男性は、適切な捜査が行われることを望んでいます。福岡県内の男性(30代)
「『やっちゃいました』とうそでも言ってしまったら本当にとんでもないことになる。取り戻せないもの、時間は。あとがよければよしというものではない、傷として残るのでそこは改めて考えてほしい」
RKB毎日放送 記者 下濱美有
詳細は NEWS DIG でも!↓
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