【古代ローマ】なぜ最上階ほど家賃が安かったのか
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【古代ローマ】なぜ最上階ほど家賃が安かったのか
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現代の都市では、見晴らしのよい高層階ほど家賃が高いものです。ところが古代ローマの集合住宅インスラでは、上へ行くほど部屋代が安くなったと伝えられています。屋根瓦のすぐ下にある部屋には、いったい何が値付けされていたのでしょうか。
この旅では、紀元前1世紀から紀元2世紀ごろのローマを舞台に、同じインスラに暮らす下の階と屋根裏の住人を、朝・昼・夜と追います。人口およそ百万人ともいわれた古代の大都市。路地にパンの匂いと物売りの声が広がる一方、レンガの壁には借家人たちの小さな部屋が何層にも積み重なっていました。
朝、上の住人は水道のある街で、水を部屋まで運ぶために階段を上ります。建物に水道管があっても、上階まで水が届くとは限りません。港町オスティアの集合住宅や各地の発掘例から、公共の水場を利用した暮らしをたどります。使った水を捨てる苦労もありました。風刺詩人ユウェナリスは、高い窓から汚水が落ちてくる危険を詠み、ローマ法には通りへ物や液体を落として損害を与えた場合の賠償規定も残っています。
昼は、スッラの時代に記された部屋代の逸話を手がかりにします。後に独裁官となるスッラと、解放奴隷の男。伝記作家プルタルコスが伝えるところでは、男は上の部屋に二千、スッラは下の部屋に三千セステルティウスを払っていたと語ります。ただし、これは最上階の家賃を示す記録ではなく、逸話が書かれたのも出来事から約二百年後。部屋の広さや家賃の期間にも不確かな点があります。キケロの法廷弁論に出る一日三セステルティウスという賃金の目安や、カエサルによる借家人の家賃免除の記録にも触れ、数字の重さを慎重に見ていきます。
夜、考えたいのは火事と避難です。ユウェナリスの『風刺詩』第三篇には、下の階で火災が始まっても、屋根裏の住人はすぐには気づかないという場面が描かれます。紀元6年にアウグストゥスが整えた夜警消防隊ウィギレスは、バケツや斧を手に街を見回りましたが、高層の火災にどこまで対応できたのでしょう。ストラボンが伝える建物の高さ制限や、ポンペイ、ヘルクラネウムで見つかった上階のトイレ・排水設備も紹介します。上階の暮らしは一様ではなく、建物ごとの差もありました。
上の部屋が安かった理由を、単なる「不便」で片づけることはできません。水を運び上げる階段と、火事から逃げ下りる階段。家賃の差には、毎日の手間と危険が織り込まれていたのかもしれません。記録にある二千と三千の数字、詩人たちの言葉、遺跡の設備を並べながら、わかっていることと推測を分けて、インスラの一日を見つめます。
【チャプター】
0:00 最上階の家賃はなぜ安い?
1:35 古代ローマの集合住宅インスラ
3:13 朝:水を運ぶ長い階段
5:16 汚水と路地、ローマの法律
6:24 昼:二千と三千セステルティウス
8:28 家賃の重さと屋根裏の住人
11:05 夜:火事に気づくのは誰か
13:13 ウィギレスと建物の高さ制限
14:36 発掘が示す上階のトイレ
15:53 家賃の差に含まれたもの
年表を追うだけでは見えにくい、誰かの朝の水汲み、昼の仕事、夜の不安。『よみがえる世界』では、史料と発掘の手がかりをもとに、もう存在しない世界の暮らしへ静かに足を踏み入れます。もし古代ローマのインスラに住むなら、家賃の高い下の部屋と、安いけれど長い階段の屋根裏、どちらを選ぶでしょうか。あなたならではの視点をコメントでお聞かせください。
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