LIFE HUB The Culture Academy #16 誰も知らない自分へ
西任暁子のコミュニケーション・アカデミー
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LIFE HUB The Culture Academy #16 誰も知らない自分へ
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西任暁子のコミュニケーション・アカデミー
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LIFE HUB The Culture Academy
#16 誰も知らない自分へ
※この概要欄の下部に、動画の文字起こしを掲載しています。
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【文字起こし】
あなたの中には、まだ、この世界の言葉を与えられていない才能があります。
あなた自身さえ、その存在を知らないもの。
かすかな気配には気づいていながら、信じることができずにいるもの。
あるいは、遠い日に一度だけ差し出して、誰にも受け取ってもらえなかったために、心のいちばん深い場所へ、そっとしまってしまったもの。
けれど、それは、失われたのではありません。
消えてしまったのでもありません。
ただ、まだ、その姿をあらわすための光と、出会っていないだけなのです。
私たちは、過ぎ去った日々を振り返りながら、自分とは何者なのかを知ろうとします。
失敗した記憶を集めては、自分には向いていなかったのだと思い、誰かに否定された言葉を拾い上げては、自分の考えには価値がなかったのだと思う。
期待に応えられなかった夜には、もう二度と、同じ扉を叩いてはいけないのだと、自分に言い聞かせることさえあります。
そうして私たちは、かつて誰かに言われた言葉や、過去に起きた、ほんの一つの出来事から、自分という人間の輪郭を決めてしまいます。
けれど。
一度の失敗が、あなたという存在のすべてを語ることなどできるでしょうか。
あの日、うまく話せなかったからといって、あなたが、人前で言葉を届けられない人だと決まったわけではありません。
一度、理解してもらえなかったからといって、あなたの心に宿った考えが、間違っていたわけではありません。
いま、まだ何の結果も見えていないからといって、あなたの中に、才能がないと決まったわけではないのです。
過去とは、あなたが歩いてきた道です。
けれど、あなたがこれから歩く道のすべてではありません。
過去は、昨日までのあなたを説明することはできても、明日のあなたに、名前をつけることはできないのです。
私たちは、ときどき、「自分は、こういう人間だから」という言葉を使います。
その言葉は、自分を理解し、傷つかないように守ってくれることもあります。
けれど同時に、まだ一度も開かれたことのない扉を、自分の手で閉ざしてしまう言葉にもなります。
だから、ときには、自分を「未定」のままにしておいてください。
自分を未定にするとは、どこへも向かわず、迷い続けることではありません。
これまで生きてきた自分を、否定することでもありません。
それはただ、過去の自分だけに、未来の自分を決めさせない、ということです。
人の心は、見知らぬものに出会うと、過去の記憶を探しはじめます。
これは何に似ているのだろう。以前は、どうだっただろう。失敗しないためには、どちらを選べばよいのだろう。
過去の経験は、暗い夜を歩くための灯火です。
けれど、その灯りだけを頼りにしていると、夜明けとともに現れた新しい景色を、見落としてしまうことがあります。
誰かが、ふと口にした言葉。
旅の途中で、なぜか心に残った風景。
理由はわからないのに、どうしても目を離すことのできないもの。
胸の奥で、小さな鳥が羽ばたくように生まれた好奇心。
やってみたい。もう少し、知りたい。
なぜだかわからないけれど、こちらへ歩いてみたい。
そのような感覚には、はじめから立派な理由などないのかもしれません。
役に立つのか。成功するのか。誰かに認めてもらえるのか。
まだ生まれたばかりの願いに、そうした答えを急いで求めれば、その小さな命は、世界に触れる前に消えてしまいます。
だから、すぐに答えを出さなくてもよいのです。
心が、ほんの少し動いたなら、その動きを、急いで説明しようとしないでください。
正しい名前をつけようとせず、役に立つものへ変えようともせず、ただ静かに、その気配のそばにいてください。
才能は、完成された姿で、突然あなたの前に現れるものではありません。
それは、ときに、小さな違和感として現れます。
誰も気に留めないことが、なぜか気になって仕方がない。
人とは違う場所に、美しさを感じてしまう。
うまくできないのに、それでも、もう一度やってみたくなる。
その、説明することのできない心の動きは、まだ名前を持たない才能が、あなたを呼んでいる声なのかもしれません。
自分の才能を咲かせるために、特別な人になろうとしなくてもよいのです。
必要なのは、自分について、かつて自分が下した古い結論を、ほんの少しだけ緩めることです。
「自分には無理だ」
そう思ったときは、問いかけてみてください。
本当に、未来の私にも無理なのだろうか、と。
「これは、自分らしくない」そう感じたときには、もう一度、考えてみてください。
それはもしかすると、これまで知らなかった自分が、はじめてこの世界へ現れようとしている瞬間ではないだろうか、と。
私たちは、自分を守ろうとするあまり、失敗しないこと。否定されないこと。正しく理解されること。立派に評価されること。
そのようなものに、心を奪われてしまうことがあります。
けれど、私たちが懸命に守っているものは、本当の自分ではなく、
失敗しない自分。傷つかない自分。誰からも見放されない自分。
という、自分についての美しい肖像なのかもしれません。
その肖像を守ることに夢中になると、遠い世界から、あなたへ向かって吹いてくる風の音を、聞き逃してしまいます。
まだ見たことのない土地から届く呼び声も、あなたの中で生まれようとしている未来も、受け取ることができなくなってしまいます。
失敗しても、構いません。すぐに答えが見つからなくても、構いません。自分が何者になれるのか、まだわからなくてもよいのです。
「わからない」ということは、何もないということではありません。
そこには、まだ一つの形に閉じ込められていない、幾千もの可能性があります。
何者でもない自分とは、価値のない自分ではありません。
それは、まだ誰にも行き先を決められていない自分。
どの空へ向かうのか、どの海を渡るのか、まだ誰も知らない自分です。
才能とは、誰かより優れていることだけをいうのではありません。
自分にしか聞こえないものを聞き、自分にしか感じられないものを感じ、ほかの誰も足を止めなかった場所で、ひとり、立ち止まること。
そして、そこで見つけた名もない何かを、震える手のまま、少しずつ世界へ差し出していくこと。
才能とは、そのために与えられた、あなたの中の力です。
その力は、いつか遠くからやって来るのではありません。もう、あなたの中にあります。
いまはまだ、はっきりとした形を持たず、言葉にもならず、誰の目にも見えないだけなのです。
花が咲いていないからといって、その種に命がないわけではありません。
暗い土の中にいる時間にも、根は、静かに伸びています。
雨の音しか聞こえない季節にも、芽吹く日のための準備は、一度も止まってはいません。
外から見れば、何も起きていないように思える日々にも、あなたの内側では、まだ見ぬ未来へ向かって、何かが静かに育っています。
だから、焦らなくて大丈夫です。
自分を急いで、完成させなくてよいのです。
ただ、過去に受け取った言葉だけで、未来の自分を決めないでください。
心の中に、ほんの少しだけ、空いている場所を残してください。
新しい言葉が、遠い旅を終えて、たどり着くことのできる余白を。
知らなかった世界が、朝の光のように、そっと差し込むことのできる余白を。
昨日までは存在しなかった自分が、小さな呼吸を始めることのできる余白を。
人生が大きく変わるとき、その始まりは、いつも劇的なものとは限りません。
ふと、心が動いたこと。ためらいながらも、一歩だけ試してみたこと。昨日までの自分なら、決して選ばなかったものを選んだこと。
それは、誰にも気づかれないほど小さな出来事かもしれません。
けれど、その一歩が、いつか、過去の延長線上には存在しなかった未来へ、あなたを運んでいくことがあります。
どうか、自分を急いで完成させようとしないでください。
あなたは、完成へ向かう途中にいるのではありません。
変わり続けること。学び続けること。昨日まで知らなかった自分に、何度でも出会い直すこと。
その果てしない歩みそのものが、人生なのです。
過去のあなたは、未来のあなたのすべてを知りません。
先生も、家族も、友人も、あなたの中に眠っている才能の全貌を、まだ知りません。
そして、あなた自身でさえ、まだ知らないのです。
だからこそ、未来には希望があります。
未来とは、すでに決められた場所ではありません。
まだ誰も知らないあなたが、静かに息をしている場所なのです。
今日、心の中に、小さな余白をつくってください。
そこへ、一筋の光が差し込めるように。
遠い国から吹いてきた風が、あなたの魂に触れられるように。
そして、長いあいだ眠っていた才能が、自分の朝を思い出せるように。
その光はいつか、まだ誰も見たことのない道を照らし、あなたを、過去のどこにも書かれていなかった未来へ、導いてくれるでしょう。
まだ、誰も知らない自分へ。まだ、私さえ知らない自分へ。
どうか恐れずに、歩いていってください。
世界はきっと、あなたが、あなた自身と出会う、その日を、遠い水平線の向こうで、静かに待っています。