「水もないのに胡瓜を?」笑われた二十二歳の花嫁…収穫の日、村中が言葉を失った|民話|江戸時代|伝説|昔話|
江戸しぐれ民話語り
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「水もないのに胡瓜を?」笑われた二十二歳の花嫁…収穫の日、村中が言葉を失った|民話|江戸時代|伝説|昔話|
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「水もないのに胡瓜を?」笑われた二十二歳の花嫁…収穫の日、村中が言葉を失った|民話|江戸時代|伝説|昔話|
天保四年、武蔵の国・砂川の里。
日照りが続き、田畑は枯れ、村の蔵から米が消えていく中、二十二歳の花嫁・お夏は、誰もが無謀だと思う決断をします。
それは――水を多く必要とすると考えられていた胡瓜を、荒れた土地に植えることでした。
村人たちは笑いました。
「水もないのに胡瓜など育つものか」
「空の蔵に青い実が飯になるのか」
しかし、お夏には、相模で種屋をしていた父から受け継いだ知恵がありました。
お夏は三両を借り、家と畑を担保にしてまで胡瓜作りに挑みます。
石だらけの土地を耕し、灰と泥を混ぜ、藁で土を覆い、朝だけ根元へ水を与える。
親蔓を摘み、一番果を落とし、実へ養分を集中させる。
村人から“狂った嫁”と笑われても、お夏は父から教わったやり方を一つずつ守り続けました。
やがて、村中の田畑が茶色く枯れていく中、お夏の畑だけに青い双葉が伸び始めます。
そしてついに、瑞々しい胡瓜が実りました。
朝露をまとった胡瓜は甘く、水気が多く、市へ持って行けばたちまち売り切れ。
誰も価値がないと思っていた“青い実”が、飢えた家族を支え始めたのです。
しかし、その裏では恐ろしい秘密が動いていました。
村の水不足は、干ばつだけが原因ではありませんでした。
金貸しの山岡屋文五郎は、上流の水路へ土嚢を積み、自分の蔵の方へ水を流していたのです。
さらに二百俵もの米を囲い込み、米の値段が上がるのを待っていました。
お夏の胡瓜が成功すれば、飢えた村人たちは文五郎の高値の米に頼らなくなる。
そこで文五郎は、ついに畑を潰すことを企てます。
夜中、手代に塩を撒かせ、胡瓜の根を枯らそうとしたのです。
ところが、その男が泥の中へ落とした一冊の帳面が、すべてを変えました。
帳面には――
上の水路を塞いだこと。
升を細工したこと。
胡瓜畑へ塩を撒く命令。
そして二百俵の囲い米。
そのすべてが記録されていました。
さらに、お夏は文五郎が作った借用証文そのものにも不自然な点を見抜きます。
二十年前の借りだというのに、紙も墨も新しい。
証文は偽物だったのです。
人々の前で証拠を突きつけられた文五郎は、ついに言い逃れできなくなりました。
家を奪おうとした偽証文。
水を止めた罪。
米を囲い込んだ罪。
胡瓜畑を潰そうとした罪。
すべてが暴かれ、文五郎は財産を没収され、遠島となります。
囲われていた米は村人たちへ返されました。
「水もないのに胡瓜を?」
そう笑われた二十二歳の花嫁。
しかし収穫の日、誰もが馬鹿にした青い実は家族を救い、村を救い、そして長く隠されていた悪事まで暴き出しました。
江戸時代の日本昔話、人情話、農業の知恵、若嫁の逆転劇、隠された悪事、勧善懲悪の物語がお好きな方は、ぜひ最後までご覧ください。
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