骨を叩いても若返りホルモンは出ていなかった|筋肉とテストステロンの説が崩れた2020年
世界の抗老化研究 | EVITY
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骨を叩いても若返りホルモンは出ていなかった|筋肉とテストステロンの説が崩れた2020年
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世界の抗老化研究 | EVITY
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かかとを持ち上げて、床にどすんと落とす。1日30回。骨に刺激を与えると若返りホルモンが出る——そう紹介されている健康法があります。顔の骨を指で叩く方法も広まっていて、50万回、70万回と再生されている動画があります。
私も、骨が体を若く保つホルモンを出しているという話は本当だと思っていました。ところが2020年、その根拠になっていた実験が再現できなかったという報告が、2つの研究チームから別々に出ていました。しかも否定されたのは、血糖値・テストステロン・筋肉量という、いちばん人を引きつけていた部分でした。
【この動画でわかること】
・2007年に何が発表されたのか:骨は単なる支えではなくホルモンを出す臓器でもある、という論文が出ました。骨から出たオステオカルシンが血液に乗って膵臓に届き、インスリンの出方を変えている、という内容です
・「若返りホルモン」と呼ばれた理由:この物質が関わるとされた範囲は、血糖値の調節、テストステロンの合成、筋肉の量、そして記憶。どれも年をとると落ちていくものばかりでした
・2020年に起きたこと:長崎大学の研究チームが、オステオカルシンを作れないマウスを詳しく調べたところ、糖の代謝もテストステロンの合成も筋肉の量も、普通のマウスと差がありませんでした
・別の国のチームでも同じでした:アメリカのチームが遺伝子編集で作った別系統のマウスでは、血液中のオステオカルシンがゼロでも、骨の量も血糖値も雄の生殖能力も正常でした
・ではこの物質は何をしていたのか:骨の中でアパタイト結晶の向きを整え、骨の硬さを決めていました。ホルモンとして全身に指示を出すのではなく、骨そのものの質を決める分子だったということです
・ただし決着はしていません:最初にこの説を出した側からは、実験に使ったマウスの遺伝的背景・週齢・性別が違うという反論が出ています。動物実験ではよく問題になる点で、言いがかりではありません
・カルシウムはどこまで骨を増やすのか:59件の試験をまとめた解析では、骨密度の上昇は0.6〜1.8%にとどまり、最初の1年ほどで頭打ちになりました
・骨折は減ったのか:食事からのカルシウム摂取量と骨折リスクとの間に関連は見当たらず、臨床的に意味のある骨折の減少にはつながりにくいと結論されています
・ただし日本人は足りていません:カルシウムの平均摂取量は504.9mgで、推奨量(30〜74歳で男性750mg・女性650mg)に届いていません。足りていない人が足すことには意味があります
・実際に骨密度を動かしたもの:週2回30分、1回だけ挙げられる最大の重さの85%を超える負荷に、着地の衝撃を組み合わせたトレーニングを8か月。腰の骨と脚のつけ根の骨の密度が有意に上がりました。軽い運動のグループでは上がりませんでした
かかとを落とす運動そのものが体に悪い、という話ではありません。崩れているのは、その先の「骨を叩けば若返りホルモンが出て、血糖値が整い、男性ホルモンが増え、筋肉がつく」という因果のつながりのほうです。健康法と、その宣伝文句は分けて考えたほうがいいと思います。
【ご注意】
この動画は研究の紹介であり、診断や治療の代わりになるものではありません。高強度のトレーニングは、紹介した試験では全期間にわたって指導者がついています。1回だけ挙げられる最大の重さの85%を超える負荷は、自己流でやれば腰や背中を痛める領域です。骨粗しょう症と診断されている方は圧迫骨折の危険があります。持病のある方、腰や膝に痛みのある方も同じです。自分の判断で高重量に手を出さず、必ず医師か専門の指導者にご相談ください。紹介した試験の対象は閉経後の女性であり、そのまま全員に当てはまるものではありません。骨折や強い痛みがある場合は受診してください。
【出典】
骨の内分泌説の始まり/Lee NK, Karsenty G, et al. Endocrine regulation of energy metabolism by the skeleton. Cell 2007;130(3):456-69. 骨芽細胞が作るオステオカルシンが膵臓のインスリン分泌などを介してエネルギー代謝を制御するとした
再現できなかった報告その1/Moriishi T, Komori T, et al. Osteocalcin is necessary for the alignment of apatite crystallites, but not glucose metabolism, testosterone synthesis, or muscle mass. PLOS Genetics 2020;16(5):e1008586. 長崎大学。純粋C57BL/6背景のオステオカルシン欠損マウスで、糖代謝・テストステロン合成・筋肉量はいずれも野生型と差がなかった。一方でコラーゲン線維は正常に配列するがアパタイト結晶の配向が乱れ、長軸方向の骨強度が低下した
再現できなかった報告その2/Diegel CR, et al. An osteocalcin-deficient mouse strain without endocrine abnormalities. PLOS Genetics 2020;16(5):e1008361. CRISPR/Cas9でBglapとBglap2を二重欠損させたマウス(BL6/C3H混合背景)。血中オステオカルシンが検出されなくても骨量・血糖・雄の生殖能力は正常だった
反論の存在/実験に使ったマウスの遺伝的背景(純C57BL/6とBL6/C3H混合)、週齢、性別の違いで説明できるという指摘があり、この論争は決着していません。マウスの実験であり、ヒトでの証拠ではありません
カルシウムと骨密度/Tai V, Bolland MJ, et al. Calcium intake and bone mineral density: systematic review and meta-analysis. BMJ 2015;351:h4183. 59RCT(食事由来15試験1,533人/サプリ51試験12,257人)。骨密度の上昇は0.6〜1.8%で頭打ちとなり、臨床的に意味のある骨折減少にはつながりにくいと結論
カルシウムと骨折/Bolland MJ, et al. Calcium intake and risk of fracture: systematic review. BMJ 2015;351:h4580. 食事性カルシウム摂取と骨折リスクの関連は認められなかった
高強度トレーニング/Watson SL, Weeks BK, Weis LJ, Harding AT, Horan SA, Beck BR. High-Intensity Resistance and Impact Training Improves Bone Mineral Density and Physical Function in Postmenopausal Women With Osteopenia and Osteoporosis: The LIFTMOR Randomized Controlled Trial. J Bone Miner Res 2018;33(2):211-220. 週2回30分・5セット5回・1RMの85%超の高強度レジスタンス+衝撃トレを8か月。腰椎と大腿骨頸部の骨密度が対照(自宅での低強度運動)より有意に改善し、安全性も許容された
日本人の摂取量と推奨量/令和元年 国民健康・栄養調査でカルシウムの平均摂取量504.9mg。日本人の食事摂取基準2025年版の推奨量は30〜74歳で男性750mg・女性650mg
'Incredulity' by Scott Buckley - released under CC-BY 4.0. www.scottbuckley.com.au
'Aphelion' by Scott Buckley - released under CC-BY 4.0. www.scottbuckley.com.au
'Convergence' by Scott Buckley - released under CC-BY 4.0. www.scottbuckley.com.au
'Simulacra' by Scott Buckley - released under CC-BY 4.0. www.scottbuckley.com.au
'Born Of The Sky' by Scott Buckley - released under CC-BY 4.0. www.scottbuckley.com.au
'Starfire' by Scott Buckley - released under CC-BY 4.0. www.scottbuckley.com.au