百八十万円の濡れ衣で、私の母は親戚二十人の前で頭を下げさせられた。「育てた親の顔が見たいと思っていたら、この程度」私は判を押さなかった――顔合わせの席で、母が元・家庭裁判所の調停委員だと名乗った
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百八十万円の濡れ衣で、私の母は親戚二十人の前で頭を下げさせられた。「育てた親の顔が見たいと思っていたら、この程度」私は判を押さなかった――顔合わせの席で、母が元・家庭裁判所の調停委員だと名乗った
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県庁のある市の東のはずれの町で、七十年続くお茶屋さんに嫁いで八年。三十六歳の私は、病院の事務の仕事をしながら、店の帳場と茶房に立ってきました。ある秋、義母が若い女の人を茶房に連れてきて、その夜、夫は「好きな人がいる。別れてくれ」と言います。一週間後、店のお金が百八十万円足りないと言われ、私は、そのお金を持ち出して団地の母に渡していた嫁にされました。義父の一周忌の座敷で、義母は親戚の前で私の母に畳に手をつかせ、「育てた親の顔が見たいと思っていたら、この程度」と笑います。夫は離婚届と、「お金はいらない。家を出ていく」と書いた紙を出し、判を押せと迫りました。そして春、夫の浮気相手の家との顔合わせの席に、私と母は呼びつけられます。
夫も義母も、まだ知りません。団地でパートをしながら私を一人で育てた母が、二十年あまり、この町の家庭裁判所で家事の調停委員をしてきた人だということを。一話完結の長編朗読劇です(約113分)。寝る前や作業のお供にどうぞ。
■ 章の目安
00:00 第1章 判を押さないで
02:12 第2章 一周忌が済んだら
04:18 第3章 別れてくれ
06:21 第4章 離れの七百万円
08:34 第5章 百八十万円
10:33 第6章 母の手
12:38 第7章 焙じ場の窓
14:39 第8章 団地の夜
16:48 第9章 お母さまもご一緒に
18:51 第10章 一周忌の座敷
20:49 第11章 この程度
22:50 第12章 判を押せ
24:55 第13章 それには
27:02 第14章 日付を付けて
29:04 第15章 命日の離れ
31:10 第16章 事務長室
33:10 第17章 裁判所に
35:14 第18章 惣菜売り場
37:20 第19章 裁判所からの封筒
39:30 第20章 母の決めごと
41:37 第21章 男の方と女の方
43:31 第22章 一回目
45:36 第23章 数を覚えておきなさい
47:36 第24章 初詣
49:37 第25章 職人の焙じ茶
51:36 第26章 増えていく数
53:42 第27章 話が作られる時
55:42 第28章 取り引き
57:42 第29章 何を望んでいるの
59:47 第30章 顔合わせ
1:01:46 第31章 行きましょう
1:03:43 第32章 押し入れの箱
1:05:44 第33章 判の意味
1:07:57 第34章 前の晩
1:09:53 第35章 裏口
1:11:55 第36章 見せびらかし
1:14:01 第37章 確かめに参りました
1:16:00 第38章 百八十万円も
1:17:56 第39章 皆さんが証人だ
1:19:55 第40章 名乗り
1:21:54 第41章 何を望んで
1:23:52 第42章 桜のつぼみ
1:25:56 第43章 跡取りの仕事
1:27:34 第44章 五年前に
1:29:41 第45章 並べる
1:31:44 第46章 最後に伺います
1:33:49 第47章 私にも
1:35:49 第48章 離れの鍵
1:37:49 第49章 母の顔
1:39:57 第50章 母の昔
1:42:00 第51章 頭を下げる人たち
1:43:57 第52章 自分で決めた判
1:46:07 第53章 店の場所
1:48:10 第54章 開店の朝
1:50:11 第55章 母の顔
■ このチャンネルについて
「ZESTノベル」は、我慢を強いられた主人公が静かに逆転する物語を、一話まるごと長編の朗読劇でお届けするチャンネルです。
・登場人物・団体はすべて架空です
・声:VOICEVOX:青山龍星
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