バイク両輪駆動の歴史:エルフやビモータも真っ青!? 二輪の2WDはおもしろい
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バイク両輪駆動の歴史:エルフやビモータも真っ青!? 二輪の2WDはおもしろい
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00:00 オープニング
01:35 サスを捨てた元祖2WD「ロコン」の力技
03:42 ロコンの駆動メカニズムと驚異の走破性
07:43 サスと操舵を両立させた「クリスティーニ」
09:47 300mmストロークを可能にした伸縮シャフト
11:35 特殊部隊への採用と機械式が突き当たった壁
13:38 油圧の革命!ヤマハ×オーリンズ「2-Trac」
16:11 ハブ内蔵油圧モーターと自動トルク配分
19:52 ダカールラリー制覇と世界限定250台の市販化
21:45 なぜ普及しなかったのか?油圧の宿命と熱問題
26:13 舗装路で曲がらない!?セルフステア破壊の恐怖
30:50 現役の2WDバイクと電動AWD「UBCO」の未来
34:04 まとめ・エンディング
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バイク両輪駆動の歴史:エルフやビモータも真っ青!? 二輪の2WDはおもしろい
【導入】
四輪の世界では、路面を選ばず安定したトラクションを発揮する4WD(AWD)が広く普及し、日常の実用車から高性能スポーツカーに至るまで当たり前の存在として定着しています。
しかし、二輪の世界に目を向けてみると、街を走るバイクのほぼ100パーセントが「後輪駆動」です。前輪も一緒に回る両輪駆動、いわゆる「2WDバイク」を日常で見かけることはまずありません。
では、二輪車において両輪駆動を作ることは技術的に不可能だったのでしょうか。
決してそうではありません。歴史を振り返れば、多くのエンジニアたちが前輪駆動の圧倒的な走破性に挑み、過酷な砂漠のラリーで勝利を収め、公道市販化にまで漕ぎ着けたモデルすら存在します。
それでもなお、なぜ2WDバイクは一般のライダーに広く普及することなく、歴史の表舞台から姿をかくしているのでしょうか。
そこには、四輪車には存在しない「サスペンションの伸縮」と「ステアリングの操舵」、そしてバイクが車体を寝かせて曲がる際に発生する絶対的な物理法則である「セルフステア」という、二輪車特有の分厚い壁が立ちはだかっているからです。
今回は、サスペンションを捨て去る力技から始まった草創期を皮切りとし、精密な機械式、砂漠を制覇した油圧式、そして現代の電子制御と電動モーターに至るまで、二輪2WDを巡るエンジニアたちの試行錯誤と工学的な進化の足跡を解説していきます。
【第1章】草創期の力技:サスペンションを捨てた元祖2WD「ロコン」
バイクの前輪を駆動させようとした時、エンジニアたちの前に立ちはだかる最初の壁は、「サスペンションの伸縮」と「ステアリングの操舵」、このふたつと駆動系が干渉してしまうことでした。
では、歴史上もっとも古い時代に両輪駆動の実用化に成功したエンジニアは、この難問をどうやって解決したのでしょうか。その答えは、驚くほど大胆で、ある意味では清々しいほどの「力技」でした。
1958年にアメリカの発明家チャールズ・フェーンによって考案され、1960年代初頭から現在に至るまで半世紀以上も製造され続けている、伝説的な2WDバイクが存在します。それが「ロコン・トレイルブレイカー(ROKON Trail-Breaker)」です。
広大な山岳地帯を抱える北米において、林業の作業員やハンター、森林警備隊などが、道のない深い泥濘地や岩場、雪山を越えて奥地へ分け入るための「歩く代わりの道具」として開発された実用車です。
ロコンの初期型が採用した、フロントフォークと駆動系の干渉を防ぐための解答。それは、「サスペンションそのものを最初から作動させない」、つまりサスペンションを完全に捨て去るという極端な割り切りでした。
フロントフォークが路面のギャップで上下にストロークするから、シャフトの長さが足りなくなったりギアの噛み合わせがズレたりする。ならば、最初からフロントフォークを伸び縮みしない金属の棒、リジッド構造にしてしまえば、ストロークによる干渉問題は完全に消滅する、というわけです。
では、路面から受ける激しい衝撃はどうやって吸収するのか。ロコンはそのすべてを、まるでトラクターのような超極太の低圧バルーンタイヤに肩代わりさせました。一般的なオンロードバイクの空気圧が2キロから2.5キロ前後、オフロードを走るトレールモデルでも1キロから1.5キロ前後であるのに対し、ロコンの指定空気圧はわずか0.2キロ。指で押せばベコベコと深くへこむほどの極端な超低圧です。タイヤそのものが大きくたわむことで、サスペンションの代わりに路面の凹凸をいなす構造を選んだのです。
フォークの伸縮という障害を排除したことで、ロコンの駆動メカニズムは、シンプルで堅牢な純機械式レイアウトで成立させることができました。
車体の中央に搭載された汎用の小型エンジンから、トルクコンバーターを介してミッションへと動力を伝達。そこからチェーンとシャフトを使って動力を車体前方へと導きます。
そしてステアリング操作と干渉しないように、フロントタイヤの真上、ステアリング軸の直近に小型のギアボックスとユニバーサルジョイントを配置しました。つまり、ハンドルの首振り運動の中心にギアを置くことで、ハンドルを左右に切っても駆動軸が大きくズレないように工夫し、そこから前輪のハブへ向けてもう1本のチェーンを真っ直ぐ下ろして前輪を駆動させたのです。
さらにロコンは、前輪の駆動系に「ワンウェイクラッチ(フリーホイール機構)」を組み込みました。カーブを曲がる際、前輪は後輪よりも外側の大きな円を描いて速く回る必要があります。もし前後を完全に直結してしまうと前輪が突っ張って曲がれなくなりますが、前輪が外側を速く転がるときだけ駆動をフリーにして逃がすことで、スムーズな旋回を可能にしていたのです。
このサスペンションを持たない完全なリジッド構造は、比類なき堅牢さと信頼性から、現在に至るまでロコンの基本形として脈々と作り続けられています。
しかし一方で、ライダーの疲労を軽減するため、フロントサスペンションを備えて伸縮するモデルも作られるようになりました。その際、前輪をチェーンで引っ張っているのに、どうやってフォークをストロークさせたのかが気になるところですね。
ロコンは、フロントフォークにリンク機構を持たせました。さらに、チェーンのたるみを自動的に吸収するスプリング式のチェーンテンショナーを巧みに組み合わせる構造を採用したのです。こうすることで、サスペンションが動いて前輪の位置が上下にズレても、テンショナーが瞬時にチェーンを張り直すことで、駆動力を逃さず伝達し続ける仕組みです。ただし、チェーンが外れたりフォークが突っ張ったりしないよう、サスペンションが動ける範囲はわずか数センチという極めて短いストロークに制限されていました。
このように、走る場所を選ぶとは言え、ロコンの走破性は、まさに圧倒的でした。後輪が滑った瞬間に前輪が確実なトラクションを生み出し、人が足を取られて歩くことすらできない深い泥沼や、倒木が転がる急斜面、さらには砂地や雪原であっても、まるで小型のブルドーザーのように地面を力強く踏みしめながら平然と進んでいくことができました。
また、中空構造のアルミホイール内に前後合わせて約19リットルもの予備ガソリンや飲料水を蓄えることができました。液体を入れない状態であればホイール内の空洞が浮き輪の役割を果たし、川や沼地で水面にプカプカと浮かぶ車体をライダーが泳ぎながら対岸へ引っ張って渡る。こんな特技まで備えていたのです。過酷な現場で働く人々にとって、これほど頼もしい相棒はありませんでした。
もっとも、元祖2WDロコンが成し遂げた成功は、同時に「二輪車における2WDの限界」を決定づけることにもなりました。
バルーンタイヤのたわみや、わずか数センチの短いサスペンションに頼る車体構成では、路面の激しいギャップを高速で吸収することができません。ロコンの最高速度は、せいぜい時速40キロから50キロ程度が限界でした。それ以上のスピードを出せば、車体は激しく跳ね上がり、とても人間がコントロールできる乗り物ではなくなってしまうからです。
低速でトコトコと泥や岩を乗り越えていく「作業用ビークル」としては、これはこれで完璧な正解でした。しかし、時速80キロや100キロを超え、激しいギャップが連続するオフロードを駆け抜けるような「本格的なスポーツバイク」には、明らかに不向きです。
サスペンションを300ミリフルに作動させ、激しく上下に暴れるタイヤを路面に追従させながら、同時にハンドルを自在に操り、なおかつ前輪へ確実にパワーを送り届ける。
二輪車の両輪駆動が「作業車」の枠を飛び出し、「スポーツ」の世界へと足を踏み入れるためには、サスペンションのストロークを完全に維持したまま前輪を回すという、まったく新しい工学的なブレイクスルーが必要でした。
【第2章】機械式の極致:サスを縮めながら舵を切る「クリスティーニ」
ロコンが示した「サスペンションをあらかじめ諦める、あるいはストロークを極端に短く抑える」という手法は、低速の作業用ビークルとしては極めて合理的でした。しかし、時速100キロを超えるハイスピードで荒野を駆け抜け、大きな段差やジャンプを越えていくモトクロスやエンデューロといった本格的なオフロードの世界では、約300ミリにも及ぶ長いサスペンションストロークはどうしても削ることができない絶対条件でした。
では、激しく上下に300ミリ伸縮し、左右に40度首を振るフロントフォークの作動性を1ミリも殺さずに、エンジンの動力を前輪へ送り届けることはできるのか。この難題に純粋な金属パーツの組み合わせだけで挑み、機械式2WDのひとつの頂点に達したのが、アメリカの技術者スティーブ・クリスティーニが開発した「クリスティーニAWD(Christini AWD)」でした。
1990年代半ばにマウンテンバイク用の両輪駆動システムとして考案されたこの機構は、2000年代に入るとホンダやKTMなどの450cc市販モトクロッサーをベースにした本格的な二輪車用システムへと発展していきました。
クリスティーニが設計したメカニズムは、まさに機械工学の粋を集めたような精密なレイアウトでした。
まず、エンジンのトランスミッション付近から動力を取り出し、小型のチェーンを使って燃料タンクの下、フレームの内部を真っ直ぐ前方へと引き上げます。
VOICEVOX NEMO:女声1、大谷
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