【物語】外ではやさしい母。40年間、それを見ていたのは私だけでした|毒親|母娘
ほんとの心理学
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【物語】外ではやさしい母。40年間、それを見ていたのは私だけでした|毒親|母娘
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急須にお湯を注いでいるとき、母が言いました。「あんた、そんな置き方したら零れるでしょ」――そのとき、玄関のチャイムが鳴りました。母の顔が、変わりました。「はぁい」。やわらかくて、少し高くて、語尾が伸びる声です。隣の奥さんは言いました。「お母さん、いつも由香ちゃんの話ばっかりよ。自慢の娘だって」。戸が閉まると、母の声は元に戻りました。この切り替わりを、私は四十年見てきました。そして四十年間、それを見ているのは、たぶん私だけでした。外面のいい親、毒親、誰にも信じてもらえない苦しさを抱えるすべての人へ。
外では、私は自慢の娘でした。
家では、何もできない子でした。
中学一年のとき、担任の先生に一度だけ話しました。
先生はこう言いました。
「お母さん、この前の面談でも心配してたよ。
愛情があるからこそ厳しくなるんだと思うな」
先生は悪い人ではありませんでした。
母に会えば、誰でもそう思います。
私はそれきり、誰にも言わなくなりました。
大人になってから、私はときどき、
自分の記憶のほうを疑うようになりました。
私が大げさなだけかもしれない。
結局、いつも同じところで止まります。
証拠がないんです。
母は人前では絶対に、あの言い方をしませんから。
▼ この物語で描かれること
・外ではやさしい親を持つ子どもには、証人がいないということ
・打ち明けても「愛情があるから」で終わってしまう経験
・証拠がないまま、自分の記憶のほうを疑うようになる心理
・30年ぶりに会った同級生が、覚えていたこと
・必要だったのは、誰かに信じてもらうことではなかった
母は今も変わりません。
これからも、気づかないと思います。
でも私は、もう自分を疑っていません。
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🎧 「ほんとの心理学」では、親子・家族・心の「ほんとうの物語」をお届けしています。
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※この物語は、心理学の一般的な知見をもとにしたフィクションであり、特定の個人を描いたものではありません。また、専門的な診断・治療に代わるものではありません。もし、親との関係があまりにつらく、心が限界に近いと感じる場合は、ひとりで抱え込まず、専門の相談窓口に話してみることも、どうか考えてみてください。
📌 章立て(目次)
00:00 急須にお湯を注いでいるとき
00:24 チャイムが鳴って、母の顔が変わった
01:02 「お母さん、自慢の娘だって言ってるのよ」
01:21 戸が閉まると、声は元に戻った
01:52 この切り替わりを、私は四十年見てきた
02:07 中学一年、先生に話したこと
02:28 「愛情があるからこそ厳しくなるんだと思うな」
02:49 それきり、誰にも言わなくなった
03:09 友達が来る日の、母の機嫌
03:33 友達が帰ったあとに言われたこと
03:51 自分の記憶のほうを疑うようになった
04:22 「証拠がないんです」
04:31 夫にも、話せなかった理由
04:51 三十年ぶりの、中学の同窓会
06:05 「玄関で待ってたとき、聞こえてたよ」
06:21 「全然違う声で、いらっしゃいって」
06:59 「そっか。……聞こえてたんだ」
07:16 電車の座席で、涙が出てきた
07:37 一人だけ、見ていた人がいた
07:53 もし、早苗がいなかったら
08:33 手帳に書いた、一行だけの言葉
08:52 それでも、急には変わらなかった
09:40 先月、またチャイムが鳴った
10:15 いつもの息苦しさが、なかった
11:02 もう、自分を疑っていません