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アイスランドはなぜ暖房費が5分の1なのか|8割は工場へ【ずんだもん&ゆっくり解説】

ずんだもんの地理ファイル

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アイスランドはなぜ暖房費が5分の1なのか|8割は工場へ【ずんだもん&ゆっくり解説】

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アイスランドの家の電気は、1キロワットアワーでおよそ37円。エアコンを1時間つけるくらいの量です。ヨーロッパの平均は52円ですから、たしかに安い。でも、タダではありません。7割になっただけです。 それでもアイスランドの家は、電気と暖房を合わせた光熱費がヨーロッパでいちばん安いと言われます。軽くしているのは、電気ではありませんでした。 住んでいるのは、およそ39万人。日本でいえば富山市ひとつぶんです。その人数で、1人あたりの発電量は世界1位。それでも電気代がふつうに高いのは、請求書が発電の代金だけではないからです。およそ2割は税金と電線を保つぶん。しかも39万人が島じゅうに散らばっているので、1人で支える電線が長くなります。発電が安い国と、電気代が安い国は同じではありません。 では何が軽いのか。2023年の統計では、家が使うエネルギーのうち60を占めていたのは、地面から湧くお湯でした。車の燃料が23で、電気は13だけです。 どこの国でも、家のエネルギーでいちばん重いのは部屋を暖めるぶんです。アイスランドはそこを電気で買っていません。地面から湧く80度から90度のお湯を管で家まで送り、暖房器と蛇口にそのまま通します。暖房の9割が地面の熱で、管は人口の95パーセントに届いています。 熱を電気に変え、その電気でまた熱に戻せば、途中でかなりが捨てられます。お湯のまま届ければ、その手間がいりません。2016年に業界団体が比べたところ、教室1つ半ほどの広さの家を1年暖める代金は、首都レイキャビクでおよそ12万円。冬の長さが同じフィンランドの首都ヘルシンキは、およそ59万円。5分の1です。ただしタダではなく、12万円は毎年、住んでいる家族が払っています。 余ったお湯は道路の下に流して雪をとかし、屋外のプールにも入れます。ガラスの温室を温めて、北の島でトマトやきゅうりも育てています。 なぜそんなに湧くのか。アイスランドは、海の底を南北に走る長い割れ目の真上にあります。地面の板が左右へ、1年に18ミリほど分かれていく。爪が伸びるのと同じ速さです。しかもこの島は、地球の奥から熱いものが上がってくる場所の真上でもある。両方が重なる陸地はここだけで、だから火山のグループが32、温泉はおよそ800あります。 ただし熱だけでは電気が足りません。発電の7割は水力です。雨も雪も多く、その多くが氷河にたまって、夏にとけて川になって下ってくる。熱と落ちる水が同じ場所にそろうのは、世界でも数えるほどです。 ――それでも、この地面は1000年前からありました。人が住みはじめてからの1000年、そこから取っていたのは洗濯と風呂のお湯だけです。 最初の管は1930年に、レイキャビクの町はずれの温泉から引かれました。長さは3キロ。つながったのは学校と病院とプール、それに60軒ほどの家です。次の1本は1943年で、長さは17キロ。2850軒までつながりました。 それでも1970年の時点で、地面の熱で暖めていた家は43パーセント。半分以上の市民は、まだ油を買って暖めていました。管が高かったからです。何十キロも保温した管を通す工事には、お金も時間もかかる。油が安いうちは元が取れません。 事情が変わったのは1973年でした。石油を売る国がそろって売る量を減らし、値段が一気に上がります。1979年にもう一度。油の出ない島は、全部よそから買っていました。そこで政府が、暖房から油を追い出す方針を決め、管を引く工事にお金を出して全国へ広げます。環境のためではなく、油が高くなったからです。 1980年代のうちに、割合は90パーセントを超えました。いま油で暖めている人は1パーセントもいません。1930年の60軒から数えれば、50年かかった計算です。2018年には、油の代わりに地面の熱を使って浮いたお金がおよそ1181億円。1人あたりにすると、年に30万円になります。 ――では、世界一つくっているその電気はどこへ行っているのか。 2024年の発電量を人数で割ると、1人あたり年に47000キロワットアワー。1日に直すと129キロワットアワーです。エアコン1時間ぶんが1キロワットアワーでしたから、1日129時間ぶん。1日は24時間しかありません。これは工場も込みの数字で、7割から8割は工場が持っていきます。家とお店に回るのは、残りの2割ほどです。 その工場は、アルミをつくる工場です。島には大きなアルミ工場が3つあり、東の入り江にある1つは年に34万トン。1日あたり940トン、10トントラックなら毎日94台ぶんです。そのために、国内でいちばん大きい水力発電所があとから建ちました。動き出したのは2007年。水をためるために高い土地の谷が沈むことへは、当時大きな反対の声も上がっています。 なぜ家ではなく工場に売るのか。海の底の電線を外国へつないでいないので、作った電気は島の中で使いきるしかないからです。電気はためておけません。だから電気でアルミをつくり、そのかたまりを船に積んで売ります。アルミは、固めた電気のようなものです。 島じゅうの発電所が建った目的は、家の請求書ではありませんでした。だから家の請求書は、ヨーロッパの平均の7割で止まっています。 毎年同じだけ出てくるわけでもありません。2024年は水が少なく、発電量は前の年より4パーセントほど減り、足りないぶんはアルミ工場への供給を絞ってしのいでいます。そしてこの島の地面は、2023年から南西部で噴火もくり返しています。住んでいた町から離れることになった住民もいて、戻れるかどうかはいまも分かりません。 お湯と噴火は、同じしくみから出てきます。地面が熱いのは、熱いものが浅いところまで来ているからです。その浅さが、お湯もくれて山も噴かせます。 タダに見えていたのは電気ではなく、お湯でした。しかもそのお湯は、油が高くなってから人が管で引いたものです。熱い地面はよその国にもありますが、家まで管が来ている国はほとんどありません。 ▼登録 つぎの1本も見逃したくない方は、チャンネル登録をどうぞ。 https://www.youtube.com/@zundamon_chi... 気になる国や県があれば、コメントで教えてください。次のファイルの候補にします。 ▼目次 0:00 安いのは 電気ではない 0:38 電気代を 検算する 2:06 安いのは お湯 4:53 お湯が 湧く理由 7:05 管を引いた 50年 9:06 世界一の電気の 行き先 11:21 同じ地面の 両面 ※時間は目安です。 ▼主な出典 ・Eurostat 家庭用電気料金(nrg_pc_204・2025年前半・税込) https://ec.europa.eu/eurostat/web/pro... ・Orkustofnun(アイスランド国家エネルギー庁)地域熱供給 https://orkustofnun.is/en/natural_res... ・Statistics Iceland「エネルギーフロー勘定 2023」 https://www.statice.is/publications/n... ・Náttúrufræðistofnun(アイスランド自然史研究所)地熱 https://www.natt.is/en/geology/water/... ・ThinkGeoEnergy(サモルカ 2016年調べ・北欧の暖房費比較/Orkustofnun 年次会合の節約額) https://www.thinkgeoenergy.com/geothe... ・IEA Iceland(発電量・電源構成) https://www.iea.org/countries/iceland... ※ このほかの参照(OECD 対アイスランド経済審査2025、レイキャビク・エナジー社史、UNU-GTP の地域熱供給技術史ほか)は動画内で触れています。 ▼クレジット 音声:VOICEVOX:ずんだもん/VOICEVOX:春日部つむぎ/VOICEVOX:玄野武宏 BGM:DOVA-SYNDROME(https://dova-s.jp) 地図:NASA EOSDIS GIBS(Blue Marble・Public domain)/Natural Earth 110m・10m(Public domain) ▼動画素材(Pexels) Sammy Marrco / Pexels Gylfi Gylfason / Pexels Rui Veiga / Pexels Jon Eliya / Pexels ▼画像クレジット(CC BY / CC BY-SA は表示義務) レイキャビク市街・© Jakub Hałun / Wikimedia Commons (CC BY-SA 4.0) レイキャビク中心部・© APK / Wikimedia Commons (CC BY-SA 4.0) 1934年のレイキャビク・© Daniel Thornton / Wikimedia Commons (CC BY 2.0) 地熱発電所の配管・© Kevstan / Wikimedia Commons (CC BY-SA 4.0) 地熱発電所と送湯管・Gretar Ívarsson / Wikimedia Commons (Public domain) 地熱発電所の蒸気・© Hansueli Krapf / Wikimedia Commons (CC BY-SA 3.0) 地熱発電所から街へ伸びる送湯管・© bowlingbal / Wikimedia Commons (CC BY-SA 3.0) 温泉から工場へ引いた蒸気管・Willem van de Poll / Wikimedia Commons (CC0) お湯で暖める暖房器・ri / Wikimedia Commons (CC0) お湯を引いた屋外プール・© Meltwaterfalls / Wikimedia Commons (CC BY-SA 1.0) 氷河ととけ水・© Jakub Hałun / Wikimedia Commons (CC BY 4.0) 氷河からの川・© dconvertini / Wikimedia Commons (CC BY-SA 2.0) アルミのかたまりを積んだ貨車・© NAC / Wikimedia Commons (CC BY-SA 4.0) アイスランドのアルミ工場・© RG72 / Wikimedia Commons (CC BY-SA 4.0) 地面の割れ目・© Olga Ernst / Wikimedia Commons (CC BY-SA 4.0) サムネイル背景の衛星画像・NASA EOSDIS GIBS (Public domain)/国境: Natural Earth 110m (Public domain)