アマルフィスパイダーは「速さ」よりも「豊かさ」を味わうフェラーリだった
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アマルフィスパイダーは「速さ」よりも「豊かさ」を味わうフェラーリだった
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ギリシャでフェラーリ・アマルフィ スパイダーのステアリングを握った瞬間、このクルマは従来のフェラーリとは少し価値観が違うのだと感じた。
フェラーリといえば、誰もが圧倒的な加速や官能的なサウンド、そしてサーキット由来の刺激を期待する。しかしアマルフィ スパイダーは、その先にある「豊かな時間」を味わわせてくれる2+2オープンモデルだった。
舞台はエーゲ海沿岸から高速、そしてワインディングロードへ。抜けるような青空と紺碧の海を横目にルーフを開ける。潮風を浴びながらアクセルを踏み込むと、フロントミッドに搭載されたV8ツインターボは実に滑らかに回転を重ね、640psという数字以上に自然な加速を見せる。
スペックだけを競うクルマではないことが、最初の数キロで理解できた。アマルフィはフェラーリ伝統のフロントV8 GTの思想を受け継ぎながら、日常での扱いやすさと快適性を高い次元で両立したモデルだ。
印象的だったのはステアリングフィールだ。軽快なのに情報量が豊富で、切り始めからノーズが素直に向きを変える。決して神経質ではなく、それでいて思いどおりのラインをトレースできる。タイトコーナーが続くギリシャの山道でも、ドライバーに余計な緊張を与えない。
また、ブレーキには最新のブレーキ・バイ・ワイヤとABS Evoを採用。ペダル操作に対する制動力の立ち上がりが極めて自然で、ワインディングでも安心感は抜群。限界域ではABS Evoがタイヤのグリップを緻密に制御し、誰でも狙ったラインを正確にトレースできる懐の深さが印象的だった。
そして、このクルマ最大の魅力はオープンで走る時間にある。ソフトトップを開けると、V8サウンドが耳だけではなく全身を包み込む。決して過激ではない。しかしアクセルを踏み増すたびに聞こえる排気音とターボの息遣いは、自然の景色と溶け合い、クルマを運転する喜びを改めて思い出させてくれる。
インテリアも印象が変わった。近年のフェラーリはタッチ式スイッチが賛否を呼んでいたが、アマルフィでは物理ボタンが復活し、操作性は大幅に向上。ドライビングに集中できる環境が整えられている。こうした改善からも、フェラーリがユーザーの声に耳を傾けていることが伝わってきた。
もちろん、アクセルを深く踏めばフェラーリらしい圧倒的なパフォーマンスを披露する。しかし、このクルマはその能力を誇示するよりも、美しい景色の中をゆったりと流し、時にはワインディングをリズミカルに駆け抜けることが似合う。
ギリシャというロケーションも、このクルマの魅力を何倍にも引き立てていた。海岸線を流し、石造りの街並みに立ち寄り、カフェでエスプレッソを飲む。そのすべての時間が、アマルフィ スパイダーとともにあることで特別な体験へと変わっていく。それは日本国内でも同様だ。
「どれだけ速く走れるか」ではなく、「どれだけ豊かな時間を過ごせるか」。
フェラーリ・アマルフィ スパイダーは、そんな新しい価値観を提案する一台だった。そしてギリシャを走り終えた今、私の記憶に残っているのは最高速でも加速Gでもない。エーゲ海から吹く風と、V8サウンドが混ざり合った、あの贅沢な時間そのものなのである。
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