朝鮮半島の大型両面石器が証明する東アジアの技術力
日本及び東アジアの古代史を科学する
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朝鮮半島の大型両面石器が証明する東アジアの技術力
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日本及び東アジアの古代史を科学する
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本ブリーフィング・ドキュメントは、洪惠媛(2024)による研究論文「韓半島前・中期旧石器時代における大型両面石器の特性と研究課題」の知見をまとめたものである。アジア東部、特に朝鮮半島における前期および中期旧石器時代の大型両面石器(バイフェイス)研究の進展、その技術的・文化的特徴、ならびに編年論争と今後の課題について網羅的に総括する。
遺跡分布と研究の端緒: 日本列島では旧石器遺跡の約90%が後期旧石器時代(約4万年前以降)に集中するのに対し、朝鮮半島では前期・中期旧石器時代の遺跡が多数確認されており、後期旧石器時代の遺跡数と同等規模で存在する。1978年の漣川全谷里(チョンゴクリ)遺跡におけるアシューリアン類似握斧の発見が、朝鮮半島の初期旧石器研究を加速させる契機となった。
「モヴィウス仮説」への反証: アジア東部にはアシューリアン(両面石器)文化が存在せずチョッパー(礫器)文化にとどまるという「モヴィウス仮説」に対し、全谷里遺跡などの発見は強力な反証となった。裵基同(ペ・ギドン)はヨーロッパのアシューリアンとの技術的類似性と固有の石器組成に基づき「チョンゴクリアン」と命名した。
時期区分の再編: 従来の「前期・中期・後期」の3区分から、製作技術上の明瞭な差異が見られない「前期」と「中期」を統合し、石刃技術が確認される「後期」と区別する「2区分法(前期/初期・後期)」への移行が近年支持されている。
大型両面石器の多様性: 握斧(Handaxe)、ピック(Pick)、鉈状石器(Cleaver)、楕円形石器(Ovate)など多彩な器種が存在する。特に鉈状石器は、事前計画と高度な加工技術を要する認知能力の指標とされる。
東アジアにおける比較研究の重要性: アジア東部のアシューリアン様式はヨーロッパやアフリカに比べて出現が遅く、典型性や頻度に差異があるが、これは知的能力の差ではなく地域環境や文化的要素に起因すると捉えるべきである。日本列島における4万年前以前の可能性のある遺跡(金取遺跡、竹佐中原遺跡など)や後期旧石器時代の両面石器を含め、アジア東部規模での広域的・総合的な比較研究が求められている。