アヴェ・マリア 夏の夜、私は一人で汽車に乗る。私はどこへ行くのだろう...
Poetrica ポエトリカ
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アヴェ・マリア 夏の夜、私は一人で汽車に乗る。私はどこへ行くのだろう...
103 просмотра · 4 недели назад
Poetrica ポエトリカ
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三好達治の詩集『測量船』から、「アヴェ・マリア」にAIで曲と映像をつけてみました。
旅立ち――そこには明日への希望と、昨日との別れの哀しさがあります。
「新しい夏帽子」「新しい靴」「海が私を待つてゐる」と、これから始まる旅への期待を感じさせながら、
「私のハンカチは新しい。それに私の涙はもう古い。」
と、過ぎ去ったものへの哀しみがふっと顔をのぞかせる。
ほとんど一世紀も前に書かれた詩だとは思えませんよね。時代がどれほど変わっても、人は同じように何かを期待し、何かを失い、迷いながら新しい場所へ向かっていくのだなあ、と思わされます。
この詩を歌にするにあたっては、最後まで女性ボーカルにするか、男性ボーカルにするか迷いました。どちらもよく合って、何度聴き比べてもなかなか決められず、ずいぶん悩みました。
もちろん作者は男性ですから、男性ボーカルのほうが自然なのかな、とも思いました。
それでも最終的に女性ボーカルを選んだのは、この詩を読んだときに私の中に浮かんだ風景――夏帽子をかぶり、新しい靴を履き、夜汽車に乗って知らない土地へ旅立っていく人――が、どうしても若い女性の姿だったからです。
そんなわけで、今回は一人の女性の旅立ちとして映像にしてみました。
完全に私的な趣味です。
「アヴェ・マリア」 三好達治
鏡に映る、この新しい夏帽子。林に蝉が啼いてゐる。私は椅子に腰を下ろす。私の靴は新しい。海が私を待つてゐる。
私は汽車に乗るだらう、夜が来たら。私は山を越えるだらう、夜が明けたら。
私は何を見るだらう。そして私は、何を思ふだらう。
ほんとに私は、どこへ行くのだらう。
窓に咲いたダーリア。窓から入つて来る蝶。私の眺めてゐる雲、高い雲。
雲は風に送られ私は季節に送られ、
私は犬を呼ぶ。私は口笛を吹いて、樹影に睡つてゐる犬を呼ぶ。私は犬の手を握る。ジャッキーよ、ブブルよ。――まあこんなに、蝉はどこにも啼いてゐる。
私は急いで十字を切る、落葉の積つた胸の、小径の奥に。
アヴェ・マリア、マリアさま、夜が来たら私は汽車に乗るのです、私はどこへ行くのでせう。
私のハンカチは新しい。それに私の涙はもう古い。
――もう一度会ふ日はないか。――もう一度会ふ日はないだらう。
そして旅に出れば、知らない人ばかりを見、知らない海の音を聞くだらう。そしてもう誰にも会はないだらう。