なぜ国家は"違法"を見て見ぬふりするのか【統治論×公衆衛生】
考えすぎる葦
0:00 / 0:00
なぜ国家は"違法"を見て見ぬふりするのか【統治論×公衆衛生】
210 977 просмотров · 3 мес. назад
考えすぎる葦
140 тыс. подписчиков
210 977 просмотров · 3 мес. назад
パチンコ屋のすぐ裏手には、ぽつんと小さな換金窓口がある。
玉は景品に化け、景品は数メートル先で現金に化ける。
たったそれだけの回り道のために、巨大な業界が成立している。
刑法185条は賭博を罰すると明記している。
それでもこの国の真ん中で、年に14.6兆円を動かす市場が表通りに堂々と看板を掲げて回り続けている。
警察はその仕組みを知り尽くしたうえであえて手を出さない。
私たちはこれを「お役所の怠慢」や「業界との癒着」で片づけたくなる。だが本当にそれだけなのだろうか。
フーコーは『監獄の誕生』のなかでこう書いた。
国家は違法をこの世から消し去ろうとしているのではない。
むしろ違法を細かく分類し、どれを叩き、どれを管理して手元に残すかを、たえず選り分けているのだと。
1920年、アメリカは酒そのものを憲法で禁じた。
完全な欲望の禁止が招いたのは、地下にあふれた闇酒場と、アル・カポネの帝国だった。
この手痛い失敗から、ひとつの冷酷な発想が生まれる。
どうせゼロにはできないのなら、せめて被害の総量を減らそう──ハームリダクション。
オランダの大麻、ネバダの合法売春、シンガポールのゲイラン、ポルトガルの非犯罪化。
文化も宗教もまるで違う国々が、同じ「遊水地」を掘っている。
腕のいい治水の技師は、わざと低い土地を用意しておく。
川が暴れたら、まずそこへ溢れさせる。
都市の心臓を守るために、犠牲にしてよい土地を地図の上に先回りして決めておくのだ。
では、その遊水地のいちばん低い場所に沈むのは、いったい誰なのか。
国家は、我々を欺くためにあの線を引いたのではない。
汚い部分は見ないでいさせてほしい――そう望んだのは、ほかでもない私たちのほうだった。
今回は、統治論・法社会学・経済学・公衆衛生を横断しながら、
なぜ国家は、自分で禁じたはずの違法を"あえて"見逃すのか、考えすぎてみました。
----------------------------
▼タイムスタンプ
00:00 - Prologue:世界一奇妙な、数メートル
02:32 - Chapter 1:合法が描かれた地図
06:11 - Chapter 2:禁じられた洪水
11:43 - Chapter 3:世界の地下水路
16:10 - Chapter 4:いちばん低い土地に沈む者
20:20 - Epilogue:薄目の作法
----------------------------
▼関連動画
• なぜ“悪人ゼロ”の世界は、内側から滅びるのか【進化ゲーム理論×免疫学】
----------------------------
▼参考文献
[1] Foucault, M. (1975). Surveiller et punir: Naissance de la prison. Éditions Gallimard.(『監獄の誕生』。illégalismes=違法の選別的管理という概念)
[2] Lipsey, R.G., & Lancaster, K. (1956). "The General Theory of Second Best." The Review of Economic Studies, 24(1), 11–32.(次善=セカンド・ベスト理論)
[3] Blocker, J.S. (2006). "Did Prohibition Really Work? Alcohol Prohibition as a Public Health Innovation." American Journal of Public Health, 96(2), 233–243.(禁酒法期に酒類消費・肝硬変死・アルコール依存の一部指標が改善)
[4] Okrent, D. (2010). Last Call: The Rise and Fall of Prohibition. Scribner.(禁酒法の通史。スピークイージーの繁茂・取締体制・アル・カポネ)
[5] Hughes, C.E., & Stevens, A. (2010). "What Can We Learn From The Portuguese Decriminalization of Illicit Drugs?" British Journal of Criminology, 50(6), 999–1022.(ポルトガルの非犯罪化を検証した代表的研究)
[6] Brents, B.G., & Hausbeck, K. (2010). The State of Sex: Tourism, Sex and Sin in the New American Heartland. Routledge.(ネバダの免許制宿を扱った社会学的研究)
----------------------------
▼出典・データ
・刑法 第185条(賭博罪)/ 売春防止法 第2条・第5・6・11・12条(e-Gov 法令検索)。売防法は売る本人ではなく周旋・場所提供・経営を主に罰する構造。
・公益財団法人日本生産性本部『レジャー白書2023』/ DK-SIS白書2023(パチンコ 2022年の貸玉量 約14.6兆円、2005年ピーク 約34.86兆円。いずれも turnover=市場を動かす総額)
・合衆国憲法 修正第18条(1920年・禁酒)/修正第21条(1933年・撤廃)。
・オランダ政府 government.nl:"Toleration policy regarding soft drugs and coffee shops"
・ネバダ州法(Nevada Revised Statutes 441A ほか・郡条例)
----------------------------
▼音源素材
効果音ラボ https://soundeffect-lab.info/
DOVA-SYNDROME https://dova-s.jp/
#統治論 #法社会学 #公衆衛生 #経済学 #フーコー #監獄の誕生 #次善の理論 #三店方式 #刑法185条 #遊水地 #治水 #考察 #考えすぎる葦