第3話 納会【僕と話すことに、努力が必要なんだと】
真神 蓮
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第3話 納会【僕と話すことに、努力が必要なんだと】
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真神 蓮
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■カクヨム
連載中
■小説
僕と話すことに、努力が必要なんだと、解けない支配と、消えない痣
■曲
冗談まじりの因縁
■歌詞
年末の、会社の納会の夜
仕事が終わり、一階へ降りていく
三人は先に、ロビーで待っている
少し遅れて、エレベータから君が降りる
「お疲れ様です」と顔を上げる挨拶
五人そろって、ビルを出る
年末の冷たい風のなかを
信号を一つ渡り、角を二つ曲がる
会場の部屋は、暖房が効いて温かい
長いテーブル、脇に積まれた景品の箱
子供用のゲーム機が、ちゃんと並んでいる
今日の目玉の、豪華な列
近くの席に、まとまって座る
乾杯のあと、賑やかな歓談が始まる
「今日の仕事、長かったですね」
「ほんと、長かったです」
納会より、景品が目当ての人が多い夜
どれを狙うか、楽しそうに相槌を打つ君
家に持ち帰って、子供が喜ぶ顔を
まだ始まらないジャンケンを待っている
一回戦、意気込んで前へ出る
あっさり負けて、苦笑いして席へ戻る
脇の列を見ると、箱はまだ残っている
二回戦も、また勝てない
そうこうしているうちに
君があっさりと勝ち残る
迷うことなく脇の列へ歩き
一番大きな箱へ、手を伸ばした
五人の席の空気が、一瞬だけ止まる
知っていたはずの、子供用の箱
空気を読まずに、抱えて戻ってくる
呆気にとられながらも、笑ってしまう
「それ、子供用なんですけど」
大きな箱を抱えたまま、きょとんとした顔
「そうなんですか」
譲る手は出ない、理由も言わない
ちょこんと膝の上に、その箱を乗せる
「うちの子、困りますよ」
横で誰かが吹き出す
声を上げて、まわりが笑う
テーブルのまわりが、どっと沸く
箱を膝に乗せたまま
少し照れたように笑う君
五人の席が、同じ笑いになる
最後まで、その箱は手放されない
勝ち抜けないまま、ジャンケン大会は終わる
ゲーム機があった場所は、空いたまま
憎しみにはならない、おかしな空気
空気を読まない、後輩の横顔
集まるたびに、笑い話になる
年末の夜に残ったのは
冗談まじりの因縁