【新人への丸投げ】地獄歌『俺だって昔は』|頞浮陀地獄
ジゴクアンプリファイア
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【新人への丸投げ】地獄歌『俺だって昔は』|頞浮陀地獄
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◇まえがき◇
謎の女による八寒地獄ツアー二周目の第一弾・頞浮陀地獄(あぶだじごく)です。
ここでは一人の人生を紹介しましょう。
真冬の川。熟練の曳舟人足。
流れも、足場も、綱の扱いも知らぬ若者へ、
仕事を任せました。
若者は足を滑らせ、
舟の重みに綱を取られ、
冷たい川へ落ちて流されました。
けれど残った者は言います。
「危険な仕事なのだから、こういう事もある」
きっと、仕方のないことだったのでしょう。
さらに言います「俺も若い頃はこう教えられた」
――――――――――
冬の川辺を舟がゆく 岸には細い曳き綱ひとつ
流れも石も知らぬ若者 初めての縄を胸へ掛けられた
冷たい風に指を丸めて それでも懸命に舟を曳く
覚えたばかりの足の置き場を ひとつひとつ確かめながら
濡れた草履が石を滑り 細い身体が川へ落ちた
舟の重みに綱を取られて 岸へ伸ばした手は届かない
どれほど冷たかったでしょう どれほど岸が遠かったでしょう
初めて任された仕事のまま 名前も声も川下へ消えた
白い息が 淡くほどける
青ざめた肌に 丸い皰が咲いてゆく
震える肩に霜が降り 睫毛の先まで白くなる
まあ 綺麗
こんなに静かに凍えるのですね
頞浮陀の白夜は 今日も美しい
危ない場所は知っていた 滑る石まで知っていた
長くこの川を見てきた者は 何も知らぬ背を先へ出した
ひとり欠ければまたひとり 新しい胸へ綱を掛ける
川仕事なら仕方がないと 冬のせいにして舟を出す
あの子にも帰る場所があり 待っていた者もいたでしょう
濡れた髪を拭く手もなく 冷たい川で息を失くした
かわいそうに まだ若いのに
知らなかっただけなのに
知っている者の代わりになって 冬の川へ消えたのですね
唇には 薄い紫
腫れた指先 透けるような皰
縮こまる身体へ霜が積もり 吐息だけが空へ昇る
まあ 綺麗
冬の花が増えてゆきます
頞浮陀の景色によく似合う
寒いでしょう つらいでしょう
きっと長い冬になるのでしょう
それでも雪は音も立てず あなたの肩へ降り続ける
膨れた皰に氷が光り 震える身体を白く飾る
ああ 綺麗に凍えましたね
とても静かで とても美しい
あの川で死んだ子も
こんな寒さを知ったのでしょうか
かわいそうに
頞浮陀は今日も
綺麗ですね
――――――――――
◇あとがき◇
八寒地獄、一か所目。頞浮陀地獄。
極寒によって全身に水皰が生じ、長い寒苦を受け続けます。
可哀相なのは、地獄で刑を受ける男ではありません。
寒い川へ落ち、助けを求めながら流され、その死を「仕方がない」と片づけられた者です。
現代的に言えば、職場の安全軽視や、安全管理の不足を題材にした唄です。
――――――――――
◇小説版◇
彼女の人生を追いかけたい人はコチラ
鈴物語をご参照ください
https://kakuyomu.jp/users/jigoku_amp/...
――――――――――
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