クラスでいちばんおとなしかった子は、その後どうなったのか
世間の検算
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クラスでいちばんおとなしかった子は、その後どうなったのか
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クラスでいちばんおとなしかった子は、その後どうなったのか。
学期末の通知表には、先生のひとことを書く欄がありました。「授業中は静かに話を聞いています。」──どのクラスにも、そう書かれる子が一人はいたはずです。この動画では、おとなしい子を何十年も追いかけた5つの国の記録を、時代順に一つずつ開いていきます。
遅れたのは、恋人や結婚、最初の仕事の時期でした。けれど、学歴や仕事の行き先まで変わったかは、国と時代で違いました。大人になるまでにおとなしさを手放した子は、そうでなかった子と見分けがつきませんでした。損かどうかを決めていたのは、子どもの中身より、周りの物差しのほうでした。
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■ タイムライン
0:00 冒頭
0:43 第1章 1928年のバークレー
2:24 第2章 北の国の追跡
3:58 第3章 3歳の90分
6:21 第4章 手放した子
8:12 第5章 1990年の上海
10:04 結末
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■ 概要
1928年にアメリカ・カリフォルニア州のバークレーで生まれた子どもたちは、研究所の人が家を訪ね、母親から話を聞く形で記録されていました。何十年もたって、別の研究者たちがその記録を読み直し、8〜10歳のころ「人見知りで引っ込みがち」(研究では内気)とされた子の、その後30年をたどりました。男子では、結婚も、父親になるのも、落ち着いた仕事に就くのも遅れ、仕事で上の立場に就く人は少なくなりました。仕事に落ち着くのが遅れた人ほど、結婚生活が続かない傾向もありました。女子では、当時のふつうの道を歩む人が多くなりました。
スウェーデンの追跡では、内気な男子の結婚と父親になる時期はアメリカと同じように遅れましたが、仕事は遅れませんでした。女子では学校に通った年数が短くなっていました。ドイツ・ミュンヘンの追跡では、4〜6歳でいちばんおとなしかった15%の子が、23歳まで見られました。はじめての決まった恋人も、はじめての常勤の仕事も遅れましたが、心の不調を抱えていたのは、特におとなしかった半分ほどの子だけでした。
ニュージーランドのダニーデンでは、1972〜73年に生まれた1,037人が、3歳のとき90分の検査を受けました。いちばんおとなしい型(100人に8人ほど)の子は、26歳でも控えめで、人の上に立ちたい気持ちが弱い大人になっていました。生きていた人の96%に会えています。21歳の落ちこみはやや多かったものの、差は小さなものでした。アメリカ・メリーランド大学の追跡(生後14か月の165人)では、友人や家族とのつながりは弱くても、学歴や仕事には差が出ませんでした。
おとなしさは、ある程度は続きます。152の追跡をまとめた研究では、性格の続きやすさは子どもの.31から、50〜70歳の.74まで上がります。カナダの追跡(160人、抄録のみ)では、おとなしくなかった人が6割ほど、10代から強まった人が2割あまり、大人になるまでに弱まった人が2割弱で、弱まった人は、ずっとおとなしくなかった人と見分けがつきませんでした。オーストラリアの追跡では、ずっと内気だった子でも、半分より多くは、10代で不安の問題を抱えていませんでした。
1990年の中国・上海の小学校では、おとなしい子ほど友だちに受け入れられ、リーダーや表彰の候補になりやすい傾向がありました。同じ調べ方を2002年の子どもたちでやると、評価は逆になっていました。おとなしさが損かどうかは、その社会が何を求めるかで変わります。ただし、この中国の結果は大人の追跡ではなく、子どものうちの評価です。
前作:クラスでいちばん太っていた子は、その後どうなったのか
• クラスでいちばん太っていた子は、その後どうなったのか
前々作:クラスでいちばん運動のできた子は、その後どうなったのか
• クラスでいちばん運動のできた子は、その後どうなったのか
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■ 使った研究・記録
・Caspi, A., Elder, G. H. & Bem, D. J. (1988) Developmental Psychology 24(6):824-831(内気な子の30年。バークレー・ガイダンス研究の記録の読み直し)
→ 抄録のみ。男子は結婚・父親・安定した仕事が遅れ、女子は結婚・出産・家庭の当時のふつうの道。人数・年齢差は本文未確認のため動画では言っていません
・Kerr, M., Lambert, W. W. & Bem, D. J. (1996) Developmental Psychology 32(6):1100-1105(スウェーデンの内気な子の35歳まで)
→ 抄録のみ。男子は結婚・父親が遅れ、仕事は影響なし。女子は学歴が低かった
・Asendorpf, J. B., Denissen, J. J. A. & van Aken, M. A. G. (2008) Developmental Psychology 44(4):997-1011(ドイツ・ミュンヘン縦断研究。4〜6歳の抑制的な子を23歳まで)
→ 抄録のみ。最も抑制的な15%は最初の安定した恋人と最初の常勤の仕事が遅れ、内面の問題を抱えがちなのは上位8%
・Caspi, A., Harrington, H., Milne, B., Amell, J. W., Theodore, R. F. & Moffitt, T. E. (2003) Journal of Personality 71(4):495-513(3歳の気質と26歳の性格、ダニーデン研究。オタゴ大学)
→ 1,037人の出生コホート、3歳で90分の検査、26歳で980人(生存1,019人の96%)。型の人数は抑制的80・控えめ151・ふつうに適応405・落ち着きのない106・自信のある281
・Caspi, A., Moffitt, T. E., Newman, D. L. & Silva, P. A. (1996) Archives of General Psychiatry 53(11):1033-1039(3歳の気質と21歳の精神疾患)
→ 抄録のみ。効果は小さい。抑制的は21歳の抑うつがやや多く、反社会性・犯罪が多かったのは落ち着きのない子
・Tang, A. ほか (2020) PNAS 117(18):9800-9807(乳児の行動抑制と26歳の暮らし。メリーランド大学カレッジパーク校)
→ 生後14か月の165人(26歳で109人)。控えめな性格・友人や家族との関係の弱さは予測したが、学歴・職業は予測しなかった(β −0.06)。標本は小さく、恵まれた家庭に偏る
・Schmidt, L. A. ほか (2017) Child Psychiatry & Human Development 48(4):632-641/Tang, A. ほか (2017) Research on Child and Adolescent Psychopathology 45(8):1621-1633(カナダ、マクマスター大学。内気さの3つの軌道)
→ 抄録のみ、160人。内気さを手放した人は、ずっと内気でなかった人と見分けがつかない
・Prior, M. ほか (2000) Journal of the American Academy of Child & Adolescent Psychiatry 39(4):461-468(オーストラリアの子どもの内気さと思春期の不安)
→ 抄録のみ。8回の調査で6回以上内気とされた子の42%、一度もなかった子の11%が思春期に不安の問題
・Roberts, B. W. & DelVecchio, W. F. (2000) Psychological Bulletin 126(1):3-25(性格の続きやすさ、152の追跡のメタ分析。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校)
→ 抄録のみ。再検査相関は児童期.31・大学期.54・30歳.64・50〜70歳.74
・Chen, X., Cen, G., Li, D. & He, Y. (2005) Child Development 76(1):182-195
→ 抄録のみ。1990年は学業・社会的な達成と関連、2002年は仲間外れ・学校の問題・抑うつと関連。大人の追跡ではない
・Chen, X., Rubin, K. H. & Li, B. (1995) Development and Psychopathology 7(2):337-349(中国・上海の小学校の内気な子と攻撃的な子)
→ 1990年の上海で、内気でおとなしい子が仲間に受け入れられ、リーダーや表彰の候補になりやすかった。大人の追跡ではない
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■ 注意書き
・冒頭と結末に出てくる通知表と教室の場面は、記録をもとにした再現です。特定の子どもを描いたものではありません。
・研究が測っていたのは「おとなしさ」そのものではなく、内気(shy)や抑制的(inhibited)です。母親の評定・検査者の観察・親の評定と、研究ごとに測り方が違います。この動画ではまとめて「おとなしかった子」と呼びました。
・1928年のバークレーの結果(Caspi 1988)と、スウェーデン(Kerr 1996)、ミュンヘン(Asendorpf 2008)、カナダ(Schmidt 2017)、オーストラリア(Prior 2000)、上海(Chen 2005)は抄録のみ確認しています。細かい数字は本文で確認できていません。
・1928年生まれの女子の「当時のふつうの道」を、今と同じ重みで語ってはいません。スウェーデンの研究は、結果が文化の中で決まる性別・状況の適切さに左右されると結論しています。
・カナダの160人は抄録の人数で、低出生体重の子を含む別のコホートの可能性があります。図に「抄録」と出しています。
・メリーランド大学の追跡は標本が小さく、白人・中〜上位中流の家庭に偏っています。「社会の中で、ちゃんとやっていけていた」は、この標本の話です。
・3歳の抑制的な子の21歳の抑うつは「やや多い」までで、効果は小さいものです。「内気な子は損をする」と一括りにはできません。
・中国の1990年・2002年は、子どものうちの友だちや学校の評価で、大人になってからの追跡ではありません。「得をした」とは言えません。
・日本の追跡研究は見つかりませんでした。
・いずれも観察した記録で、「おとなしかったから、そうなった」という因果は言えません。
#内気 #性格 #世間の検算