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「昭和の味ね。お客様にお出しする物じゃないわ」所長は八十六のお客様の前で、私の筑前煮を流しにあけた。床下に一時間もぐったと言う業者の男。伝説の家政婦が梅の瓶に残した印は、指一本ぶんも動いていなかった

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「昭和の味ね。お客様にお出しする物じゃないわ」所長は八十六のお客様の前で、私の筑前煮を流しにあけた。床下に一時間もぐったと言う業者の男。伝説の家政婦が梅の瓶に残した印は、指一本ぶんも動いていなかった

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町の家事代行の会社でパートをしている私は、川沿いの大きな家に一人で住む八十六のお客様から、名指しで頼まれていました。春、本社から来た新しい所長は、朝礼で私を見て「昭和のやり方の人は、もう要らないの。」と言い、帰る前にお客様と飲む十分のお茶も取り上げます。六月、所長は「うちの会社と組んでいる」という業者の男を連れてきて、お客様の前で私の履歴書を読み上げ、笑いました。「三十年も、住み込みで、よそのお宅の台所に? ご自分の家族も持たないで。人の家に住みついて生きてきた方なのね。」私が朝から煮た筑前煮は、「昭和の味ね。お客様にお出しする物じゃないわ。」と、お客様の目の前で流しにあけられました。その午後、男は床下に一時間もぐったと言い、お客様に百八十万円の換気扇を付けさせます。四日後、私は受け持ちを外されました。それでも、床下の梅の瓶に私が残しておいた印は、指一本ぶんも動いていなかったのです。 所長も業者の男も、まだ知りません。三十年、東京のお屋敷の名を一度も口にしなかった私が、昔、何と呼ばれていたのかを。一話完結の長編朗読劇です(約115分)。寝る前や作業のお供にどうぞ。 ■ 章の目安 00:00 第1章 空の鍋 02:16 第2章 昭和のやり方 04:24 第3章 名指しのお客様 06:37 第4章 十分のお茶 08:39 第5章 三日で回す 10:49 第6章 無料の点検 12:46 第7章 置き目 14:46 第8章 所長の問い 16:44 第9章 墓まで持っていく 18:53 第10章 梅仕事 20:55 第11章 履歴書 23:20 第12章 空の鍋 25:20 第13章 受け持ちを外す紙 27:26 第14章 動かない置き目 29:32 第15章 届かない声 31:33 第16章 大工の家 33:56 第17章 平たい箱 36:03 第18章 物置の裏 38:05 第19章 電器屋 40:11 第20章 木曜日の夜の薬 42:01 第21章 冬の夜の薬 44:18 第22章 足場 46:22 第23章 嗅ぎ回る 48:24 第24章 門前払い 50:32 第25章 代わりはいくらでも 52:36 第26章 安心講座 54:41 第27章 付き添うならだ 56:49 第28章 口止め 58:51 第29章 会場まで 1:00:51 第30章 自分のために 1:02:55 第31章 電話の声 1:05:02 第32章 門の前の男 1:07:06 第33章 瓦は一枚も 1:09:04 第34章 揺れる手 1:11:04 第35章 覚え違い 1:13:00 第36章 迎えはいらん 1:15:01 第37章 今日で終わり 1:17:03 第38章 私の決まり 1:19:07 第39章 付き添い 1:21:23 第40章 壇の上の瓦 1:23:21 第41章 安心していません 1:25:24 第42章 物置の裏の瓦 1:27:20 第43章 置き目 1:29:24 第44章 十一万円の品物 1:31:31 第45章 一人暮らしの家ばかり 1:33:24 第46章 申し上げません 1:35:38 第47章 姉さん 1:37:46 第48章 一番の決まり違反 1:39:56 第49章 夕方の広間 1:42:03 第50章 十分のお茶 1:44:12 第51章 どこのお屋敷 1:46:11 第52章 また木曜日に 1:48:18 第53章 足場を外す男 1:50:21 第54章 置き目を一つ 1:52:27 第55章 梅の花と一人分のお茶 ■ このチャンネルについて 「ZESTノベル」は、我慢を強いられた主人公が静かに逆転する物語を、一話まるごと長編の朗読劇でお届けするチャンネルです。 ・登場人物・団体はすべて架空です ・声:VOICEVOX:青山龍星 #スカッと #朗読劇 #朗読 #家政婦 #伝説の家政婦 #家事代行 #悪徳業者 #職場 #逆転 #長編 #睡眠用