夫が退職しても、親族の集まりで私の仕事は終わらない。送り先の紙を返した六十四歳の私に、夫は何を求めるのか
ことばの灯り
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夫が退職しても、親族の集まりで私の仕事は終わらない。送り先の紙を返した六十四歳の私に、夫は何を求めるのか
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退職祝いに集まった八人分の食器を下げ、持ち帰りの煮物に蓋をした私へ、夫は「お返しは明日中に頼む」と送り先の紙を置きました。六十四歳の私は、その紙を夫の湯飲みの脇へ戻しました。疲れが取れたら、また私が引き受ける。もう、そんな話にはしたくなかったのです。
長く勤めてくれた夫を祝う気持ちは、変わりません。親族に会うのも、孫が来るのもうれしい。それでも、私が台所に立っている間に、毎月わが家で昼食会を開く話まで決まっていました。退職後は二人で平日に出かけられると思っていたのに、夫の空いた時間が、私の新しい仕事になろうとしていました。
夫がお返しの手伝いを頼もうとしたのは、仕事のある娘の奈緒でした。来月の準備にも、まだ承諾していない娘を数に入れている。私が断った分を娘へ渡したいわけではありません。頼む前に、できるかを聞いてほしい。私にも、娘にも。
夫は返礼品を送り、仕出し弁当も探し始めます。けれど、料理を作らなくてよくなれば、それで私の時間は自由になるのでしょうか。費用は普段の食費から、当日は朝から家にいてほしい。その言葉に、私は家計帳を開きます。親族を迎える支度も、出費を収める工夫も、これまでは私の中だけに残っていました。
少し離れて暮らすことを考えても、私の年金はまだ入りません。娘が差し出してくれた部屋には、平日の夕方、孫を迎えてほしいという期待がありました。助けたい気持ちと、自分の予定を先に渡したくない気持ち。ありがたい申し出を断るのは、夫に紙を返すよりもつらいことでした。
小さな部屋の家賃、通院、毎日の買い物。友人と住まいを確かめ、数字を並べるほど、一人暮らしの不安も見えてきます。夫の工夫に感謝することと、この先も同じ家で暮らすことに、同じ返事はできるのか。誰かを遠ざけるためではなく、自分で会う日を選ぶための話し合いを、どうぞ聞いてください。
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