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【海綿採りの男が「耳のついた金属のビスケット」を見たと話したら、銅十トンを積んだ三千三百年前の船が眠っていた】ウルブルン沈没船——宛先は積み荷が知っている

真夜中の資料室

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【海綿採りの男が「耳のついた金属のビスケット」を見たと話したら、銅十トンを積んだ三千三百年前の船が眠っていた】ウルブルン沈没船——宛先は積み荷が知っている

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1982年の夏、トルコ南岸カシュの沖で、海綿採りのダイバーが「耳のついた金属のビスケット」を見たと話しました。それは紀元前14世紀の終わりごろに沈んだ船の積み荷で、銅約10トンと錫(すず)約1トンをはじめ、ガラス・象牙・黒檀・ネフェルティティの名を刻んだ金のスカラベまで、九つか十の文化の品々が積まれていました。今夜は積み荷を一つずつ手がかりに、「誰の船で、どこへ向かっていたのか」を、確かな事実と諸説を分けて推理します。 0:00 耳のある金属 0:35 海綿採りの報告 1:08 二万回の潜水 1:48 三千三百年前の船 2:15 牛皮形の銅 2:42 青銅十一トン分 3:11 すずはどこから 3:49 世界中の積み荷 4:25 王妃の名の金 5:04 文字の消えた板 5:34 船上の人々 6:17 出発した港 6:53 船の行き先 7:26 宛先のない荷 ■ この回で扱うこと ・ヤルカヴァクの海綿採りダイバー、メフメット・チャクルの報告と、ボドルム水中考古学博物館 ・カシュの南東約10km、ウルブルン岬の岸から約50m、深さ44〜52mの海底 ・1984年にジョージ・バスが始め、翌年からジェマル・プラクが指揮した発掘(1994年まで11シーズン・22,413回の潜水) ・長さ15mほど、レバノン杉の板をほぞで組んだ船と、24個の石のいかり ・年輪と放射性炭素が示す、紀元前1320年前後という年代 ・牛皮形の銅の板354枚と丸い銅121個、錫約1トン(混ぜればおよそ11トンの青銅) ・錫の産地をめぐる2022年の研究(トルコのケステルと中央アジア)と2023年の反論 ・ガラスのかたまり約175個、カナンの壺149個以上とテレビン樹脂、黒檀・ゾウとカバの牙・ダチョウの卵の殻・バルト海の琥珀 ・金37点と、ネフェルティティの名を刻んだ金のスカラベ ・ツゲ材2枚と象牙のちょうつがいの、折りたたみ式の書き込み用の板 ・天秤のおもり、4本の剣(カナン・ミケーネ・イタリアの型)、組になったミケーネの持ち物 ・出発した港(地中海の東岸かキプロス)と、エジプトで見つかった王どうしの手紙の贈り物の一覧 ・行き先の二つの説(ロードス島の港/ミケーネの王の宮殿) ■ 扱いについて 乗っていた人の人数や遺骨については扱っていません。王の贈り物を運ぶ船だったという説、ミケーネの人が乗っていたという説、行き先の説は、積み荷や持ち物から研究者が推した考えで、荷札や記録は残っていません。ネフェルティティの名のスカラベは、王妃本人の持ち物だという証拠ではなく、船がこの時代より前には沈んでいないことを示す目安として使われています。書き込み用の板は、この形の板として現存する最も古い例の一つとされますが、ろうは残っておらず、文字は一つも読めません。「世界最古の本」とは扱っていません。錫の産地は、2022年の研究に2023年に反論が出ており、決着していません。映像の銅のインゴットと壺は同じ型の参考で、ウルブルンの実物ではありません。 【主な参照】 ・Pulak, C. (1998)「The Uluburun Shipwreck: An Overview」International Journal of Nautical Archaeology 27(3):188–224 ・Pulak, C. (2008)「The Uluburun Shipwreck and Late Bronze Age Trade」Aruz, J. ほか編『Beyond Babylon』The Metropolitan Museum of Art ・Bass, G. F. (1986)「A Bronze Age Shipwreck at Ulu Burun (Kaş): 1984 Campaign」American Journal of Archaeology 90(3):269–296 ・Payton, R. (1991)「The Ulu Burun Writing-Board Set」Anatolian Studies 41:99–106 ・Manning, S. W. ほか (2009)「Absolute Age of the Uluburun Shipwreck: A Key Late Bronze Age Time-Capsule for the East Mediterranean」 ・Powell, W. ほか (2022)「Tin from Uluburun shipwreck shows small-scale commodity exchange fueled continental tin supply across Late Bronze Age Eurasia」Science Advances 8(48) https://doi.org/10.1126/sciadv.abq3766 ・Berger, D., Kaniuth, K., Brügmann, G. & Pernicka, E. (2023)「Why Central Asia's Mushiston is not a source for the Late Bronze Age tin ingots from the Uluburun shipwreck」Frontiers in Earth Science https://www.frontiersin.org/journals/... ・Bachhuber, C. (2006)「Aegean Interest on the Uluburun Ship」American Journal of Archaeology 110(3):345–363 ・Institute of Nautical Archaeology「Uluburun Late Bronze Age Shipwreck Excavation」 https://nauticalarch.org/projects/ulu... #ウルブルン沈没船 #水中考古学 #古代の交易 #真夜中の資料室 【画像出典】 ・Oxhide-type copper ingot, Rousse Regional Museum of History, IV 4291 / CryolophosaurusEllioti / CC BY 4.0(ブルガリアのルセ地方歴史博物館にある同じ型の銅のインゴットで、ウルブルンの実物ではありません) ・Amphora of Canaanite shape MET 18.8.19 / メトロポリタン美術館 / CC0(カナン型の壺の参考で、ウルブルンの実物ではありません) ・Relief of Queen Nefertiti MET 47.57.1 / メトロポリタン美術館 / CC0(ネフェルティティのレリーフ) ・Bodrum Castle (2017) / Serhio Magpie / CC BY 4.0(ボドルム水中考古学博物館のあるボドルム城) ・07580 Kalkan Belediyesi-Kaş-Antalya, Turkey - panoramio (1) / Andrzej Szkopiński / CC BY 3.0(カシュ近くの海岸で、沈没地点そのものではありません) 音声: VOICEVOX(四国めたん / ずんだもん)/ 立ち絵: 坂本アヒル様 / BGM: 甘茶の音楽工房 / 効果音: 効果音ラボ / 背景動画: Pexels