抗がん剤もない時代、古代人はがんになったらどうしていたのか
古代の裏側
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抗がん剤もない時代、古代人はがんになったらどうしていたのか
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古代の裏側
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大分平野の南西のはずれで、板のような石を組んだ小さな棺が見つかった。
ふたの下には、1500年ほど前に葬られた中年の男。その顔には、亡くなったあとに赤い色が塗られていた。
肩・背骨・骨盤・頭の骨には、骨が盛り上がった跡がいくつも残っている。研究者が最も疑ったのは、前立腺のがんが骨に広がった跡だった。
抗がん剤が使われ始めたのは、わずか80年ほど前。それより前の人々は、がんになったらどうしていたのか。
▼この動画でわかること
・古墳時代の大分の石棺の男性の骨に残る、がんの転移とみられる跡(確からしさは「有力」)
・がんは人類より古い。7600万年前の恐竜の骨と、160万年以上前の人類の仲間の足の骨に骨肉腫
・「ホモ・エレクトスのがん」と紹介される足の骨は、じつは持ち主の種が決まっていない
・ネアンデルタール人やセディバの骨の腫瘍は、良性とみられている
・2700年前のスキタイの王の骨から、前立腺で作られる物質の反応が出た
・「がんは人が作った病気」は論文ではなく、大学の発表と談話の言葉だった
・中世ケンブリッジの墓143人から割り戻すと、がんを抱えて亡くなった人は9〜14%。いまのイギリスは40〜50%
・エジプトの「最古の乳がんの記録」の患者は「男」と書かれていて、手当ての欄は「処置なし」
・エーベルス・パピルスの腫れもの21項を1つずつ仕分けた表(切る10・焼く5・塗る・包む10・手を出すな4)
・4500年前のエジプトの頭の骨の切り跡は、治療の跡か、死後に調べた跡か、まだ決まっていない
・がんを「カニ」にたとえた理由を書いたのは、ヒポクラテスではなくガレノスたち
・ヒポクラテス派の格言「隠れたがんには手当てをしないほうがよい」
・ケルススは「切っても戻ってきた」「見分けは時間と経験でしかできない」と書いた
・レオニデスの「切っては焼く」手術と、痛みを和らげたマンドラゴラの酒
・なぜ古代の医者は「触らないほうがよい」と書いたのか
・日本に残る最も古い医学書『医心方』(984年)の「石癰」
▼チャプター
0:00 石の棺の赤い顔
2:41 がんは現代病か? いちばん古いがん
5:42 「人が作った病気」と見えにくいがん
8:16 古代の医者の手と二十一の腫れもの
12:32 カニの名と「隠れたがんには触るな」
13:31 ケルススの見分け方と切っては焼く手術
16:12 なぜ触らないほうがよかったのか
17:02 日本の腫れものと石の棺
▼おもな参照
Tsurumoto ほか(2018)BioMed Research International 2018:1659510 — 大分・木ノ上古道石棺の古墳時代の男性(初報 田代 1982)
Ekhtiari ほか(2020)Lancet Oncology 21:1021-1022 — Centrosaurus の骨肉腫
Odes ほか(2016)South African Journal of Science 112(7/8) — Swartkrans SK 7923 の骨肉腫
Randolph-Quinney ほか(2016)South African Journal of Science 112(7/8) — セディバの類骨骨腫
Monge ほか(2013)PLoS ONE 8(6):e64539 — Krapina の肋骨の線維性異形成
Schultz, Parzinger ほか(2007)International Journal of Cancer 121:2591-2595 — Arzhan のスキタイの王の前立腺がん
David & Zimmerman(2010)Nature Reviews Cancer 10:728-733 — 古代のがんはまれだったか
Mitchell, Dittmar ほか(2021)Cancer 127:3054-3059 — 中世ブリテンのがんの割合
Hunt, Roberts, Kirkpatrick(2018)International Journal of Paleopathology 21:12-26 — 古代のがんの系統的レビュー
Tondini, Isidro, Camarós(2024)Frontiers in Medicine 11:1371645 — エジプトの頭蓋骨236の切り跡
Breasted(1930)The Edwin Smith Surgical Papyrus(OIP 3) — 第45例・第39例
エーベルス・パピルス(ライプツィヒ大学図書館 papyrusebers.de の英訳)Eb 857〜877 — 腫れものの章
ヒポクラテス『箴言』VI.38(Adams 英訳)/『流行病』5.101
ケルスス『医学論』5.28.2(Spencer 英訳 Loeb)
Panegyres(2024)— karkinos の名の由来(ガレノス・アイギナのパウロス・アテナイのステファノス)
アエティオス『医学書』16.45(レオニデスの乳房の手術の引用)
ディオスコリデス『薬物誌』4.75 — マンドラゴラ
丹波康頼『医心方』(984年・国宝 半井家本)巻15
▼注記
・歴史の解説であり、医療の助言ではありません。体の不調やしこりに気づいたら、医療機関を受診してください。
・マンドラゴラは毒性のある植物です。まねをしないでください。
・古墳の男性の診断、エジプトの切り跡が治療か、パピルスの腫れものががんか、古代にがんがどれだけ少なかったかは、結論の出ていない論点として扱いました。
・確からしさは「確立/有力/議論あり/分からない」の4段階で語り分けています。
・年代や数値は公開時点の一次文献に基づいています。人物の場面は、資料の記述をもとにした再現です。
#古代人 #考古学 #人類史 #医学の歴史 #がん