嘘をついた狐は助かり、訴えた狼が皮を剥がれた|禁書目録に載った約760年前の物語『狐のレイナルト』
ポルト【物語の航海図】
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嘘をついた狐は助かり、訴えた狼が皮を剥がれた|禁書目録に載った約760年前の物語『狐のレイナルト』
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ポルト【物語の航海図】
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処刑台の上で、狐は言いました。「わたしには、荷車で7往復しても運べないほどの金と銀があります」。
王を殺す計画と、隠された宝。どちらも作り話でした。それなのに王は狐を許し、
代わりに捕らえられたのは、狐を訴えた狼と、狐を呼びに行った熊でした。
約760年前、今のベルギー北部、フランドル地方で書かれた動物の物語『狐のレイナルト』(ゲーテ『ライネケ狐』の元になった話)を、
中世オランダ語の原文から訳して、最後まで語ります。
▼ 目次
0:00 冒頭 処刑台の嘘
0:46 約760年前の物語
1:12 ① 狐だけが来ない
2:17 雄鶏の葬列
3:00 ② 熊と蜂蜜
3:24 獣と人間の決まり
3:36 大工の丸太とくさび
4:45 ③ 猫とネズミ
5:47 ④ 狐の懺悔
6:16 鶏のいる塀
6:53 ⑤ 処刑台の嘘
7:27 王を殺す計画と、隠された宝
8:11 藁1本の赦し
8:54 ⑥ 皮の袋と靴
10:03 ⑦ 袋の中身
11:20 羊が差し出された
12:16 ⑧ 760年、読まれてきた
12:51 禁書目録と、同じ印刷屋
13:05 ベルギーの教室で
13:26 因幡の白うさぎ
13:41 あなたはどう読む?
▼ ヨーロッパの学校では
・ベルギー(フランドル):王立オランダ語文学アカデミーの教材は、13〜14歳から使えます。読む前に「悪いことをした人は、最後には必ず罰を受ける。賛成?」と聞き、読み終えたら「全員が、ふさわしい報いを受けたか?」と聞きます。ほかにも「レイナルトは英雄か、悪党か」「レイナルトの弁護人として弁論を書け」といった問いがあります。
・オランダ:大学1年生に高校時代に読んだ作品を尋ねた2018年の調査では、72校の90%で『レイナルト』が読まれていて、中世の作品で1位でした。
・フランドルの高校2〜3年向けの国語教科書は、大手3社とも『レイナルト』を扱っています。
▼ この動画について
・中世オランダ語の本文(コンブルフ写本・3,469行。DBNL 所収の Janssens ほか校訂、1991年)から訳しました。既存の日本語訳は使っていません。
・語ったのは第1部『Van den vos Reynaerde』だけです。狐と狼の決闘、狐が宰相になる結末、羊が食べられる場面などは、のちの続編やゲーテ版で足されたもので、第1部にはありません。
・作者は「ウィレム」という名前しか分かっていません。この写本では「多くの本を作ったウィレム」、別の写本では「『マドック』を作ったウィレム」と名乗っています。
・禁書目録に載ったのは、この物語を書き直した16世紀の本です(1566年にアントワープのプランタンが出した蘭仏対訳の本が、1570年にアントワープで出た禁書目録に入りました。目録を刷ったのもプランタンです)。13世紀の原作そのものが禁じられたわけではありません。理由は目録に書かれていません。
・1479年にゴーダで印刷された散文の本の序文は、この本を「世の中の巧妙な計略を知り、悪い人に騙されないための本」として売っています(これも書き直された本です)。
・熊が剥がれたのは背中の皮ひと切れ、狼の夫婦が剥がれたのは足の皮です。動画では血の描写を控えました。
・狼の訴えは原文では「妻を辱められた」という内容です。動画では「家族を傷つけられた」と言い換えました。
・本文で理由が書かれていない所(羊が袋を開けなかった理由、狐を追う場面がない理由など)は、推測だと分かる形で話しています。
・「当時の狐は、鶏を盗む嫌われ者。だから宮廷を出し抜く話が笑えた」は、研究者(ヘルマン・プレイ)の読みです。
・狐が宝のありかとして言う「フルストの森」は、今のオランダ南西部の町フルストのあたりと結びつけられてきました。ただし場所の特定には学者の間で争いがあります。
・獣が服を着ているのは、この動画の絵の決めです。原文に服装の記述はありません。
▼ 日本語で読むなら
第1部だけの日本語訳は見つけられませんでしたが、続編や、この話をもとにしたドイツ語版は日本語で読めます。
・檜枝陽一郎 編訳『中世オランダ語 狐の叙事詩』(言叢社・2012年)…続編『ライナールト物語』と散文本の訳
・藤代幸一 訳『狐ラインケ』(法政大学出版局・1985年)…1498年の低地ドイツ語版の訳
・ゲーテ『きつねのライネケ』(上田真而子 編訳、岩波少年文庫・2007年)
▼ 主な出典
・Van den vos Reynaerde(コンブルフ写本・DBNL)
https://www.dbnl.org/tekst/_vos001vos...
・Herman Pleij, "Reynard the Fox", The Low Countries 3
https://the-low-countries.com/wp-cont...
・王立オランダ語文学アカデミー(KANTL)「教室の文学カノン」教材「Reynaert de vos」
https://literairecanonindeklas.be/lee...
・Van Vliet & Dietz「Karel, Reynaert – en de anderen?」Nederlandse Letterkunde 23(2018)
https://doi.org/10.5117/NEDLET2018.3....
・1570年アントワープの禁書目録とプランタン版:bestiary.ca
https://bestiary.ca/biblios/biblio114...
・檜枝陽一郎「『狐ライナールト物語』の冒頭における改変について」立命館文學635
https://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/...
・アントワープ大学(2022)修道院の写本の余白に書かれたレイナルトの一節
https://www.uantwerpen.be/nl/onderzoe...
▼ シリーズ「世界の教科書に載っている物語」
#01 主人を騙さなければ、飢えて死ぬ『ラサリーリョ』(スペイン)
#02 メデューサの髪は、なぜ蛇になったのか『変身物語』(ローマ)
#03 「踏み絵だけは、許してください」『ガリバー旅行記』(アイルランド)
#04 方舟を降りたノアの、最初の一言は呪いだった『ノアの方舟』
#05 狐のレイナルト(この動画)
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