一晩で金貨500枚を失い、大司教の墓に閉じ込められた|禁書目録に載った約670年前の物語『デカメロン』
ポルト【物語の航海図】
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一晩で金貨500枚を失い、大司教の墓に閉じ込められた|禁書目録に載った約670年前の物語『デカメロン』
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ポルト【物語の航海図】
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大理石の棺のふたが閉まりました。中に残されたのは、ひとりの若者と、その日に葬られた大司教の亡きがら。
この若者は、その日の朝まで、金貨500枚を持った馬の商人でした。
たった一晩で、金貨を全部だまし取られ、汚物溜めに落ち、墓に閉じ込められたのです。それなのに、夜が明けたとき、彼は損をしていませんでした。
約670年前、イタリアの作家ボッカッチョが書いた『デカメロン』の中の一話「ペルージャのアンドレウッチョ」を、
イタリア語の原文から訳して、最後まで語ります。
▼ 目次
0:00 冒頭 大司教の棺の中
0:34 『デカメロン』とは
1:22 禁書目録と、消された言葉
1:45 ① 金貨500枚の財布
2:21 財布を見ていた女
3:13 ② 姉を名乗る女
3:53 「わたしは、あなたの姉なの」
5:02 ③ 便所の板
6:34 黒いひげの大男
6:52 ④ 泥棒と井戸
7:30 落ちたから、助かった
8:05 大司教のルビーの指輪
8:21 井戸と夜の見回り
9:17 ⑤ 大司教の墓
9:48 指輪を、自分の指に
10:03 閉じ込められる
11:04 死んだ人に、脚をつかまれた
11:15 ⑥ 指輪ひとつ
11:54 だまされて、だまし返した男
12:04 ⑦ 670年、読まれてきた
12:16 禁書目録と、直した版
12:31 「司祭」は「泥棒」に
12:42 イタリアの高校で
12:56 あなたはどう読む?
▼ イタリアの学校では
・高校(多くは3年)の国語で、『デカメロン』の数話の一つとして読まれています。学校が公開している授業記録に「Andreuccio da Perugia (Decameron II, 5)」が載っています。
・授業や解説でよく問われるのは「運と知恵、どちらが彼を救ったのか」。便所・井戸・墓と3回落ちて3回はい上がる筋を「一晩で大人になる話」として読む解説もあります。
▼ この動画について
・イタリア語の本文(Wikisource 所収、Laterza 1927年の底本)から訳しました。既存の日本語訳は使っていません。
・禁書目録に載ったのは『デカメロン』という本です。1559年、教皇パウルス4世の目録が書名を挙げて禁じ、1564年のトリエントの目録で「直せば刷ってよい」に変わりました。この一話だけが禁じられたわけではありません。
・1573年にフィレンツェで出た「直した版」では、この話の墓の場面は一語も変わっていません。墓荒らしの「司祭」が消され「泥棒」に書き換えられているのは、そのあと学者サルヴィアーティが手を入れた版の本文です(1587年の刷り直しの影印で確かめました)。
・棺の中の大司教フィリッポ・ミヌートロは実在の人で、1301年に亡くなりました。墓はナポリ大聖堂にあります。
・作者ボッカッチョは、若いころ(1327年ごろ〜1341年)ナポリで銀行の見習いをしていました。
・本文が理由を書いていない所(便所の板が外れたのはわなか偶然か、女たちが若者を殺すつもりだった理由、泥棒が若者を閉じ込めた理由など)は、推測だと分かる形で話しています。
・女は原文で「わずかな値で誰にでも身を任せる」女と書かれています。動画では「お金をもらって男の相手をして暮らす女」と言い換えました。
・「だまされて、だまし返し、盗まれて、盗み返した男」は、哲学者クローチェ(1866〜1952)の言葉を言い換えたものです。
・下働きの20年分の稼ぎ:1330年代フィレンツェの日当から計算した目安です(円には換算していません)。
▼ 日本語で読むなら
『デカメロン』の日本語訳はいくつも出ています。
・平川祐弘 訳『デカメロン』(河出文庫・2017年)
・河島英昭 訳(講談社文芸文庫・1999年)
・柏熊達生 訳(ちくま文庫・1987〜88年)
▼ 主な出典
・Decameron, Giornata seconda, Novella quinta(Wikisource)
https://it.wikisource.org/wiki/Decame...
・Treccani, Dizionario Biografico「Boccaccio, Giovanni」
・Tonozzi, Reading the Decameron from Boccaccio to Salviati(コーネル大学)
https://ecommons.cornell.edu/server/a...
・McGrath, Heliotropia 15(ブラウン大学)
https://www.brown.edu/Departments/Ita...
・1573年デプタティ版の影印(Internet Archive)
https://archive.org/details/ildecamer...
・ナポリ大聖堂のミヌートロ礼拝堂(ナポリ大学)
https://www.iris.unina.it/handle/1158...
▼ シリーズ「世界の教科書に載っている物語」
#01 主人を騙さなければ、飢えて死ぬ『ラサリーリョ』(スペイン)
#02 メデューサの髪は、なぜ蛇になったのか『変身物語』(ローマ)
#03 「踏み絵だけは、許してください」『ガリバー旅行記』(アイルランド)
#04 方舟を降りたノアの、最初の一言は呪いだった『ノアの方舟』
#05 嘘をついた狐は助かり、訴えた狼が皮を剥がれた『狐のレイナルト』(フランドル)
#06 デカメロン「アンドレウッチョ」(この動画)
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